【中医協総会】医師会「フォーミュラリは報酬上の評価になじまない」「医薬品リストは恣意的になる可能性」

【2021.07.21配信】厚生労働省は7月21日に中央社会保険医療協議会総会を開き、後発医薬品の推進や分割調剤、フォーミュラリなどについて議論した。この中で、日本医師会は報酬上の評価に慎重的な意見を示し、医療機関個別の裁量があるべきとの見解を示した。

医師会「長期処方の対処の一つである医療機関の紹介実態も重要」

同日の総会では、事務局から「医薬品の適切な使用の推進」とのテーマが提示され、その中で、長期処方の現状とそれに関連して分割調剤の議論、さらにはフォーミュラリに関する意見が出された。

現在、処方日数の31日以上が増加している。調剤料の算定回数では、平成30年1720万回、令和元年1772万回、令和2年1844万回。こうした長期投薬については、平成28年度の診療報酬改定において、30日以内の再診か、200床以上の場合は地域の医療機関への紹介、もしくは分割指示による処方箋交付を行うことを明確化している。

日本医師会常任理事の城守国斗氏は、長期処方増加の背景にはコロナもあるとの見方を示し、「前回の総会でも指摘したが、長期処方は多剤処方に気が付きにくくなるなど保険財政上からも長期処方を減らしていくことが望ましい」と話した。

その上で、「(長期処方の)病床別のデータも出して欲しい」とし、現在の対処方法の一つである地域の医療機関への紹介の実態など、「処方の方法ばかりに注目するのではなく、機能の分化・連携の観点が必要」とした。

適正使用に関しては、「高齢者への適正使用の指針が策定されたものの、運用方法を確立してから改めて検討するのがいいと思う」と話した。

フォーミュラリに関しては、「有用である」とする一方で、「法人経営の観点からの活用は理解するが、従前の主張の通り、診療報酬上で評価することはなじまない」とした。
「医療機関が主導する医薬品リストは恣意的になることは容易に想像できる。あくまで治療指針を示すガイドラインに基づき、ある程度の自由度をもって使われるもの」との考えを示した。

フォーミュラリの策定過程に関しては、「前回の改定議論の際に、策定方法に関して医療機関独自なのか、コンサルタントの助言に基づくものなのか、などの質問をしていた。調査結果が分かれば教えて欲しい」とした。

日本薬剤師会常務理事の有澤賢二氏は、コロナの影響もあり長期処方が増えている状況に触れ、「薬がしっかり飲めているのか、副作用が出ていないか、薬局でのフォローアップが重要になっている」と話した。

その上で、「かかりつけ薬剤師の役割の視点で考えるべきだ」と主張した。

フォーミュラリについては、院内フォーミュラリと地域フォミュラリの違いなど、定義を整理する必要性を指摘。適切な活用は重要としつつも、「報酬上で評価するかどうかは慎重な議論が必要」と述べた。

健保連・幸野氏「フォーミュラリ、前回の議論と違うのは厚労省研究班でのGL策定。環境整ってきている」

日本病院会副会長の島弘志氏は、フォーミュラリに関して、「経済性を高めるために重要」との考えを示し、「すでに普及しているクリニカルパスの中で利用することにより相当推進されると考える」と話した。

健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、医薬品の適正使用に関連して、「重複投与やポリファーマシー解消がしっかり行える方向にするべき」と指摘。長期処方だけでなく、長期的な同じ処方に関しても言及し、「170日間以上同じ処方などに対策を打っていく必要がある」と話した。
分割調剤に関しては「前回も指摘したが今の形式では普及しないので、抜本的に見直す必要がある」と述べた。
「繰り返し利用できる処方箋についても、ぜひ検討してほしい」とした。

フォーミュラリについては、「前回の議論と違うのは厚労省でも研究班でガイドラインを策定していること。環境も整ってきている。診療報酬上の対応も必要だ」と指摘した。

オンライン資格確認の有用性にも触れ、「医療機関でも薬剤情報が見られるようになる。全体の普及までには時間もかかると思うが、こうした仕組みを有効に活用して残薬やポリファーマシー解消などを推進してほしい」と話した。

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