上場企業2,459社 2020年度決算「平均年間給与」調査

 2020年度(2020年4月期-2021年3月期)の上場2,459社の平均年間給与(以下、平均給与)は603万2,000円(前年度比1.7%減、前年度614万円)で、前年度より10万8,000円減少した。
 平均給与は2012年度から8年連続で上昇したが、2020年度は初めて減少に転じた。平均給与の中央値は587万9,000円(前年度597万8,000円)で、2年連続で低下した。
 平均給与のトップは、不動産事業のヒューリックで1,708万1,000円(同1,760万9,000円)。平均給与は2.9%減少したが、2年連続で1,700万円台を維持した。前年トップの売掛債権保証のイー・ギャランティの平均給与は597万3,000円(同2,413万1,000円)で、1133位だった。
 銀行トップは、あおぞら銀行808万9,000円(同793万円)で、全体順位は179位(同236位)。
 平均給与の伸び率は、最高が松井証券の前年度比24.3%増(738万1,000円→918万1,000円)で、通常の賞与に加え、コロナ禍での慰労として全社員に1カ月の賞与を支給し大幅に増えた。
 なお、対象外の持株会社377社では、最高はTBSホールディングスの1,501万6,000円だったが、1,000万円以上は前年度より2社減り33社(前年度35社)となった。
 コロナ禍での業績悪化や残業の減少などで、上場企業の平均給与は初めて前年度から減少した。国税庁の民間給与実態統計調査(平成30年分)によると、正規社員の平均給与は503万5,000円(全体440万7,000円)で、上場企業は99万7,000円上回ったが、差は縮小した。

  • ※本調査は、2020年度決算(2020年4月期-2021年3月期)の全証券取引所の上場企業を対象に、有価証券報告書の平均年間給与を抽出、分析した。2011年度決算から連続で比較可能な企業を対象(変則決算企業は除く)に、持株会社は除いた。業種分類は証券コード協議会の定めに準じた。
平均給与

平均年間給与 「減少」が「増加」を初めて上回る

 2,459社のうち、前年度より平均給与が増加したのは943社(構成比38.3%、前年度1,277社)に対し、減少は1,508社(同61.3%、同1,169社)、横ばいは8社だった。
 平均給与の「増加」企業数は、2年連続で前年を下回った。一方、「減少」企業数は2年連続で前年を上回り、「減少」企業数が「増加」企業数を上回ったのは、2012年度以降で初めて。

平均給与

産業別 建設業が4年連続トップ

 産業別の最高は、建設業の732万4,000円(前年度732万円)。2013年度以降、8年連続で増加したが、増加額は2016年度(前年度比21万2,000円増)をピークに縮小している。
 そのほか、不動産業706万3,000円(前年度703万円)、電気・ガス業689万7,000円(同675万8,000円)と続く。
 一方、最低は小売業の476万7,000円(同482万7,000円)で、唯一、400万円台にとどまった。  
 コロナ禍の影響が懸念される小売業とサービス業(平均給与535万2,000円)は、調査を開始した2012年度以降で初めて減少に転じた。平均給与の減少は、小売業が181社のうち、100社(構成比55.2%)、サービス業は215社のうち、120社(同55.8%)で、2業種とも半数を超えた。 
 平均給与トップの建設業と最低の小売業の差は255万7,000円(前年度249万3,000円)で、前年度より6万4,000円拡大し、1.5倍の格差が生じている。
 平均給与の伸び率の最高は、電気・ガス業の2.0%増(675万8,000円→689万7,000円)。2020年度に沖縄電力を除き送配電事業を分社化し、四国電力と九州電力を除き平均給与は上昇した。
 一方、減少率の最大は、製造業の2.4%減(619万4,000円→604万3,000円)。製造業1,175社のうち、798社(構成比67.9%)で平均給与が減少し、コロナ禍での生産活動の停滞などが影響したようだ。

平均給与

平均給与1,000万円以上は39社

 平均給与の最高は、不動産事業などを手掛けるヒューリックで1,708万1,000円(前年度1,760万9,000円)。2年連続で1,700万円台を維持した。
 2位は三菱商事1,678万3,000円(同1,631万8,000円)、3位は伊藤忠商事1,627万8,000円(同1,565万7,000円)、4位は三井物産1,482万5,000円(同1,393万4,000円)、5位は住友商事1,356万3,000円(同1,437万円)と、総合商社が続く。
 平均給与の増加率トップは、松井証券で前年度比24.3%増。業績好調で賞与が増加したほか、2020年度はコロナ禍での慰労として全社員に賞与1カ月分を支払い、平均給与を押し上げた。
 平均給与1,000万円以上は39社で、前年度(42社)より3社減少した。また、900万円以上1,000万円未満が37社(前年40社)、800万円以上900万円未満125社(同139社)、700万円以上800万円未満298社(同334社)、600万円以上700万円未満614社(同651社)と、前年度を下回った。
 一方、500万円以上600万円未満775社(同757社)、500万円未満571社(同496社)は増加した。

平均給与
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