新型GR86とBRZのMTモデルになぜアイサイトがないのか!? 今後は改良モデルはMTにも対応する見込み

じつに9年ぶりのフルモデルチェンジを遂げたトヨタ 新型GR86とスバル 新型BRZ。排気量アップや内外装デザインなどが注目されているが、じつは今回シリーズ初となる先進安全装備「アイサイト」をATモデルに標準装備としている点も大きなトピックである。でもなぜMTモデルには設定すらされていないのか!? 開発陣に疑問をぶつけてみた。

トヨタ 新型86&スバル 新型BRZ

衝突被害軽減ブレーキを当たり前の機能にしたのはスバルのアイサイト

アイサイトが有名になったのは5代目レガシィシリーズから。その後フォレスターやインプレッサなど他の車種にも展開されていったのだ

アイサイトといえば、スバルを語るには欠かせない先進安全装備だ。数十年にも及ぶ歴史があるが、2009年に発売された5代目レガシィで一躍有名になった技術である。

ぶつからないクルマというキャッチーなフレーズとともに、スバルファンのみならず、多くの人が注目したのだった。当時いわゆる自動ブレーキは今ほど市民権を得ておらず、トヨタや他のメーカーは高級車に。それもオプション設定としていた時代に、10万円という低価格で手に入った先進技術である。

その後の活躍はご存知の通りで、他のメーカーも衝突被害軽減ブレーキの機能は当たり前のように装備されるものとなった。

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結論! MTモデルにアイサイトが装備されるのは間もなく

トヨタの先進装備の総称はトヨタセーフティーセンスであるが、今回の新型GR86にはスバルのアイサイトの名前が使われている

アイサイトの偉大な歴史はこれくらいにして、今回の本題である新型GR86とBRZについて、である。そう、なぜMTモデルには設定がないのか? という点については、筆者のみならず、読者の方々も疑問に思っている方の少なくないはずだ。

結論からいうと“現段階”ではMTにアイサイトの設定はないが、改良時には追加される可能性が大いにあるのだった。

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緊急ブレーキ作動時にクルマをどう制御するのか? が最大の課題

MTモデルはどうしたってクラッチ操作が必要となるため、緊急時の挙動をどうするか? といった研究がなされているのだ。そう考えると新型WRX STIにも初のアイサイトモデルが追加される可能性も大いにある

どういうことか? アイサイトの研究・開発を行なっているスバル 技術本部 ADAS開発部の大郷 道夫さんによれば「もちろんMTモデルにも搭載したいというのが率直な意見です。ただ問題なのはMTモデルの場合、緊急ブレーキを発動した際にクルマをどう制御するのか? が大きな課題」と語る。

MTモデルはご存知の通りドライバーがクラッチ操作をしてシフトのアップダウンを行う。緊急時にブレーキをクルマがかけた場合、通常で考えればエンストしてしまうのだ。

そのような制御とした場合、先方にある障害物はクリアできても、そこから緊急回避。あるいは後続車のことを考えれば、すぐさま復活できる仕様でないと危険が増すというのがスバルの考えなのである。

そのため現段階では、新型BRZのみならずスバルのMTモデルにアイサイト装着車が存在しないのである。

GRヤリスなどMTモデルの実用例も多々存在。今後の改良に期待大

アイサイト装着車はMTモデル同様にステアリングコラムから伸びたレバーでクルーズコントロールの操作を行う

だが、その反面トヨタのMT車には衝突被害軽減ブレーキが装備されているモデルもある。GRヤリスがその筆頭で、障害物を検知した際にエンストも伴う仕様となっており、スバルと考え方が違うのだった。

別の開発者によれば「スバルとトヨタの緊急時に関する考え方が異なるため、引き続き両社間で煮詰めていきます」と語っていた。と考えれば、いますぐはムリにしても、今後行うであろう改良モデルにはMT車にも対応する可能性が大いにあるのだった。

【筆者:MOTA編集部 木村 剛大】

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