糸魚川市副市長が辞意 市議会コンプライアンス特別委で 糸魚川市長選めぐる発言 「市政混乱」に陳謝

 糸魚川市の藤田年明副市長(62)は21日、辞意を表明した。4月18日に執行された糸魚川市長選で、部課長らに現職米田徹市長の投票依頼をしたとして公職選挙法に触れる疑いがあることから、市選挙管理委員会が調査を行い、20日に藤田副市長の警察への告発を決めた。藤田副市長は前日の同選管の方針を受けて米田市長と相談し、辞任の意向を固めたとしている。

 藤田副市長は21日、市役所で開かれた市議会コンプライアンス調査推進特別委員会に出席。冒頭で辞任の意向を伝えた。「選管の決定を重く受け止め、私が副市長の職を続けることはさらなる市政の混乱をもたらすこととして、このたびの責任を取って職を辞することにしました。大変申し訳ありませんでした」と頭を下げた。

 辞職する時期に関しては現在、骨盤骨折のため入院療養中の米田市長の公務復帰を待ってからとし、復帰後なるべく早い時期とする考え。「災害、コロナ対策など、市長が公務に復帰するまでの間は市長の指示を仰ぎながら責任を持って対応していく」と述べた。委員会終了後に市民会館会議室で開かれた記者会見でも同様に説明し、「市長には7月上旬ごろに辞意を伝えていたがもう少し待つように言われた。市長の入院があって遅くなったが昨日の選管の決定が(辞任公表の)タイミングとなった」と話した。

糸魚川市の藤田副市長が辞任を表明。記者会見で「市政に混乱を来した責任」と説明し、市民におわびした

 部課長らへ「頼むね」と投票依頼の声掛けをしたことについては、米田市長の名前は言っていないことを一貫して主張。その上で「誤解を招き不適切だった」と反省の言葉を述べた。

 藤田副市長は織田義夫前副市長の退任に伴い平成30年12月3日付で4年任期で就任したが、辞任の時期が確定すれば織田前副市長に続き任期途中での辞任となる。産業部交流観光課長、総務部企画財政課長、総務部長などを歴任した。市は後任人事については現時点で未定としている。

組織体制緩み指摘相次ぐ

 米田市長は藤田副市長の辞職表明を受けて21日、「突然のことで大変驚いている。副市長本人の意思を尊重したい。市政が停滞しないよう幹部職員と相談し対応していく」とコメントを発表した。

 藤田副市長は就任当時、あいさつで「市政の停滞は許されないとの思いから覚悟を決めた」と語っていた。今回の副市長辞任、市長の入院期間延長による不在と職務代理者を置かない市の対応を受け、同委員会(委員15人)では委員から市政の空白や市役所全体の組織体制の緩みを危惧する指摘や意見が相次いだ。

市民に憤り、不安の声

 市民からも市に対して憤りや不安の声が聞かれる。青海地域の40代パート女性は「糸魚川市市全体がたるんでいる。市長選、市議選が終わり、新しい糸魚川市に期待をしていたのに非常に残念」。糸魚川地域の60代女性は「市長が不在なら副市長が代理で市政運営をしないといけないのでは。今後、誰が糸魚川を引っ張っていってくれるのか」。能生地域の40代会社社長は「問題の出所の責任者が入院、当事者の辞任では市民の不安、不満に誰が応えてくれるのか。若手新人の議員が多数生まれ、糸魚川に新しい風が吹いた気持ちに水を差された。情けない気分だ」。

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