<金口木舌>海の日

 琉球王国時代「唐旅」という言葉があった。中国への船旅を意味するが、風を頼りに進む帆船での航海は、死を覚悟しての旅でもあった。残された家族ができることはただ一つ。航海安全を神に祈ること。時には一晩中徹夜で歌って踊り、祈ることもあったそう

▼命懸けの海の旅は今でこそなくなったが、水難事故は毎年発生している。2020年の県内の水難事故は85件、水難者は103人でいずれも全国最多だった。交通死亡事故より海での死亡・行方不明者が2倍近い

▼どうにか早期に発見し救出できないかと、ドローンとAI(人工知能)技術で海上パトロールをしようと実験が始まる。ドローン事業を担う那覇市のクリエイトジャパンと、東京のAI技術を持つ企業アジラが実用化を目指す

▼監視から発見・通報、救助、捜索といった一連の流れをドローンで支援する。ライフセーバーと連携し、AIとドローンが人命救助する時代となった

▼今日は海の日。本来であれば海水浴やビーチパーティーといきたいところだが、台風6号の襲来で海のレジャーはお預け。4連休とはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大を考えるとステイホームが賢明だ

▼唐旅では無事、沖縄に戻ったら再び感謝の祈りを捧げたとされる。過剰なAI依存は禁物だが、今後は「困った時の神頼み」ならぬ「AI頼み」になるかもしれない。

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