実習生守る法律、当事者に届かず 「妊娠分かれば帰国」思い込みから孤立へ 双子死体遺棄で有罪判決

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4月下旬に開いた記者会見で、涙ながらに無実を訴えるベトナム人技能実習生の被告=熊本市中央区

 自室で1人きりで双子を死産したベトナム人技能実習生の被告(22)に対し、熊本地裁は20日、2人の死体を遺棄したとして執行猶予の付いた有罪判決を言い渡した。裁判では「妊娠が周囲に分かれば帰国させられる」と被告が思い込み、孤立出産に追い込まれたことが判明。日本は法律で実習生が妊娠や出産で不利益な取り扱いを受けることを禁止しているが、当事者たちには届いていないことが浮き彫りになった。

 弁護側によると、被告は2018年8月に来日。芦北町の農家で働き、収入の多くをベトナムの家族に仕送りしていた。SNSなどを通して「妊娠や出産をすると、帰国せざるを得なくなる」との間違った情報に接し、周囲に相談することができなかった。

 技能実習生の受け入れ方法などを定めた17年施行の技能実習適正化法は、実習生の私生活の自由を不当に制限することを禁じる。法務省は、妊娠や出産を理由にした不利益を禁じる男女雇用機会均等法について「実習生にも適用される」と通知。実習生の受け入れ手続きをする監理団体や受け入れ側へ注意を促している。

 しかし、外国人技能実習生問題弁護士連絡会共同代表の指宿昭一弁護士(59)=東京=は「実習生に法律の知識は十分に伝わっていない」と指摘する。被告も、監理団体から法律があることを知らされていなかった。

 「外国人を日本に送り出す送出機関が妊娠しないよう約束を強要する事例も横行しており、取り締まる必要がある」と強調。「日本で働く間は妊娠と出産はできないということが実習生の“常識”になっている」という。

 厚生労働省の調査では、妊娠・出産で実習継続が困難になったという受け入れ側の届け出は、17年11月から20年12月までに637件あった。中には解雇や帰国を迫られた違法なケースもあるとみられている。

 判決を受けた実習生を支援する「コムスタカ-外国人と共に生きる会」代表の中島眞一郎さん(66)=熊本市=は、今回のケースを「氷山の一角」と強調。「実習生に不利益な扱いをしたとして、実際に処分された監理団体や雇い主の例は聞いたことがない。結局は自己都合での帰国とされてしまう」と現状を批判し、「適正な処分を行う強い制度が必要だ」と指摘した。(隅川俊彦)