「みずなし本陣」 8月末の撤退意向表明 噴火災害伝える場、存続の危機

開業22年目で存続の危機を迎えている「みずなし本陣ふかえ」=南島原市深江町

 1991年の雲仙・普賢岳噴火災害を映像などで学習できる施設や飲食・物産販売施設を備える長崎県南島原市深江町の道の駅「みずなし本陣ふかえ」を運営する第三セクター「みずなし本陣」(宅島壽雄社長)が、8月末の撤退を検討していることが21日、関係者への取材で分かった。来場者の減少による赤字と施設の老朽が主な原因。99年4月の開業から22年目で存続の危機を迎えている。
 みずなし本陣などによると、2016年以降は5年連続の赤字で、新型コロナウイルス感染症の影響で20年決算(19年12月~20年11月)は、純損益が2800万円の赤字。債務超過は8200万円だった。
 みずなし本陣ふかえは、水無川沿いにある被災地で、同町の復興の象徴として開業した。土石流で被災した家屋をそのままの姿で見られる県設置の被災家屋保存公園に隣接。敷地面積は約8200平方メートルで公園を含めると、全体で約3万2千平方メートル。
 開業年の入場者数は64万人。修学旅行や団体・個人客、インバウンド観光客と幅広く利用され、02年は雲仙岳災害記念館(島原市)の開業に伴う相乗効果もあり89万人に伸び、05年12月には500万人を突破した。
 しかし、その後は40万~30万人台で推移。昨年は新型コロナ禍の影響を受け、年間入場者数は前年比55.1%減の15万2千人、売り上げは同50.7%減の9700万円と落ち込んだ。
 株主数は宅島建設(雲仙市)や南島原市、島原鉄道(島原市)など計20(個人含む、3月現在)。南島原市は資本金の約3分1となる約2460万円を出資している。
 関係者によると、5月の株主総会で宅島社長が撤退の意向を示したという。川田喜傅治取締役は「施設の老朽化や噴火災害の記憶の風化が主な原因。災害から30年がたち人々の関心が薄れた。16年の熊本地震で30万人台に急落し、昨年3月以降のコロナ禍が追い打ちを掛けた」と述べた。
 市は取材に対し、「現在運営会社から正式な提案を待っている状況」と静観の構え。会社の精算や民間への売却など今後については「正式な提案がないため考えていない」とした。
 松本政博市長は「南島原だけではなく島原半島全体から見ても重要な施設。事業を継続する必要はあるが、市議と協議し最終的な結論を出したい」と話した。


© 株式会社長崎新聞社