自動車事故で後遺症…「介護料支援制度」を知ってますか? 熊本県内の利用者少なく

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「自動車事故対策機構の支援が心の支えになる」と話す森田典子さん(右から2人目)、秀治さん(右から3人目)夫妻。左右は機構熊本支所の職員=14日、熊本市南区

 自動車事故の重い後遺症に苦しむ人たちが利用できる「介護料支援制度」。PR不足もあるが、個人情報保護法の壁もあって利用が進んでいない。制度を運営する独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)の熊本支所(熊本市中央区)は「こちらからのアクセスは難しいので、悩んでいる人は積極的に相談してほしい」と呼び掛けている。

 この制度は、交通事故による脳や脊髄の損傷で寝たきりや車いす生活になった人を対象に、月額3万~21万円の介護料を支給する。機構の前身の自動車事故対策センター時代からある制度で、自動車損害賠償責任保険(自賠責)の運用益が原資だ。ただ現在、県内の制度利用者は56人にとどまる。本年度の新規利用者もまだ1人だ。

 県警によると、県内での交通事故による過去5年間の重傷者数は年平均686人。機構の伊藤元育・熊本支所長は「重傷者数に対して申請が少なすぎる。制度を必要とする人はまだかなりいるはず」とみる。

 利用者数が伸び悩む要因の一つに、05年度に施行された個人情報保護法があるという。熊本支所によると、かつては問い合わせに対応していた警察や自治体などから、被害者に関する情報が得にくくなった。市役所や町村役場にパンフレットを置き、ポスターを貼っているが、被害者や家族に直接、制度を説明する機会が激減。「被害者からの連絡がないとアプローチできないのが現状」という。

 1996年に交通事故で頸椎[けいつい]を損傷し車いすの生活になった熊本市南区の森田典子さん(65)は、事故から5年後の2001年に制度を知った。以来、毎月約7万円の介護料を受け取っている。

 「介護や医療費だけでなく生活費にも充てている。経済的にも精神的にも負担が軽減した」と制度のメリットを説明する。夫の秀治さん(68)は「機構には気軽に相談もできるので、心の支えにもなっている」と話す。

 10年以上前に起きた事故の後遺障害でも制度の対象となる場合がある。伊藤支所長は「交通事故による重度の後遺障害で悩んでいる人のために機構がある」と話している。熊本支所TEL096(322)5229。(上島諒)

 ◇自動車事故対策機構 国土交通省所管の独立行政法人で、略称NASVA(ナスバ)。2003年に設立された。自動車事故で介護が必要など一定の要件に該当する人への介護料の支給や、交通遺児への生活資金の無利子貸し付けが主な業務。外出困難世帯への訪問支援や、受給者・家族向けの交流会開催、悩み相談や介護情報の提供も担う。自動車運送事業者の運行管理者や運転者向けの指導講習、適性診断も業務の一つ。