「人に迷惑をかけずに生きる準備で精一杯」46歳独身男性の老後資金計画

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、46歳、会社員の男性。2年前に本連載でアドバイスを受けた相談者。アドバイスにしたがい資金計画を改善したものの、まだ不安が払拭できないそうです。現状の資金計画へのアドバイスは? FPの渡邊裕介氏がお答えします。

2年前、2019年7月に本サイトにて渡邊裕介さまにアドバイスを頂いた者です。貴重なアドバイスを頂きましてありがとうございました。

2年前に指摘された事を考慮しながら、老後に向けて色々と動き出してみたのですが

老後の不安が収まらず、改めて質問させていただきました。

85歳まで生きる想定で老後の人生設計を検討した際、今考えている資金繰りでなにか見落とし等はありますでしょうか? また、何かアドバイス等がありましたらご教示いただければと思います。

漠然とした質問にはなりますが、このまま老後に向けて意図しないイベント等もあるかとは思うのですが、老後に向けてのアドバイス等をいただければ幸いです。

将来、人や行政に迷惑を掛けないように生きていくための準備で精一杯であり、何のために生きているのかわからなくなってきています。

よろしくお願いいたします。

【2年前に指摘された事項】

・投資方針を明確に、iDeCoとつみたてNISAは使い分ける

・収入が不安定なら、流動性資産の割合を減らす

・自営業の場合、所得保障保険の検討

・家賃等の家計改善

・お小遣いを減らす

・継続的に収入を得るシステム作り(重要)

・将来の準備を運用任せにするのはリスクが高すぎる

【前回質問時からの主な変更点】

(1)不安定なフリーランスをやめ、収入減を受け入れ正社員になりました。

(2)投資方針を再検討し、iDeCo、つみたてNISAへ加入しました。

(3)投資への割合を考慮し、生活防衛費的な部分を現金保有する事にしました。

(4)手取り減少に伴う家計改善を若干実施しました(指摘された引っ越しは難しかった)

【今後の人生設計】

・60歳まで今の仕事を続け、可能であれば60~65歳までは再雇用で働きたい(給与は半分になる)

・現在の会社には退職金制度はない

・ねんきんネットを確認した結果、60歳まで仕事をして、65歳から年金を受給する際の月額は12万2,000円

・親の老後に向けて、施設への入居等に掛かる費用は親がある程度は用意している

・親の遺産等はあてにしないで自分の老後を検討する必要がある

・今後、老後に向けて親兄弟親族を含めて誰もいない(自分の死後の処理をする宛ても無い)

・結婚、同棲、事実婚等の予定はない

・持ち家等はなく、今後も購入予定はない

・老後も東京に住み続ける想定であり、60歳になったら家賃の安いエリアへの引っ越しを想定している

・糖尿病を発症し病院へ通っているが、薬物治療と適切な食事療法等により現在は小康状態を保てている

【相談者プロフィール】

・男性、46歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸(東京都、一人暮らし)

・毎月の世帯の手取り金額:33万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:50万円

・毎月の世帯の支出の目安:21万4,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万8,000円

・食費:3万5,000円

・水道光熱費:1万円(テレワークのためエアコン使用などで削減が難しい)

・教育費:5,000円

・通信費:6,000円(高速通信必須。格安スマホを更に安いプランに変更した)

・お小遣い:3万円(被服、娯楽、日用品を含みます)

・その他:6万円(交際費1万、交通費1万、医療費3万※治療費、実家費用1万)

・残金に関しては、家電買い換えや実家への帰省費に充てております。

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・つみたてNISA2万3,000円/月、iDeCo3万3,000円/月

・ボーナスからの年間貯蓄額:30万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):300万円

・現在の投資総額:300万円

・現在の負債総額:0円

※相談内容は一部編集しています。


渡邊:こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊です。2年前に一度ご相談いただいた方からの再度のご相談です。前回の「iDeCoは上限額まで拠出?40代フリーランスの資産形成」のアドバイスを元に、実際にいくつか行動に移されたとのこと、素晴らしいですね。色々と状況は変化していきます。その時、その時のベストな対策を立てる際の参考になれば幸いです。

前回の相談から変化した点

さて、前回のご相談からの変更点は下記のようです。

(1)不安定なフリーランスをやめ、収入減を受け入れ正社員になりました
手取りの年収が年間720万円から年間446万円に減少するも、60歳までは安定的に収入を得られるようになりました。65歳までは給与半分で働く予定。

(2)投資方針を再検討し、iDeCo、つみたてNISAへ加入しました。
これまで、年間180万円をロボアドバイザーで積立てをしていたところ、iDeCoとつみたてNISAに加入。iDeCoに2万3,000円/月の年間27万6,000円、つみたてNISAに3万3,000円/月の年間39万6,000円、合計67万2,000円の積み立て運用をスタートしています。それ以外をキャッシュで年間66万円貯蓄されているので、年間の貯蓄額は133万2,000円となります。

(3)投資への割合を考慮し、生活防衛費的な部分を現金保有する事にしました。
今までは、全額ロボアドバイザーによる運用資産として活用していましたが、現在は手元の貯蓄もこれから貯めていくお金も約半額を現金保有と変更しています。

(4)手取り減少に伴う家計改善を若干実施しました(指摘された引っ越しは難しかった)
これまで、年間約540万円(手取り収入と貯蓄額との差額)であった支出が年間約310万円程度まで削減しています。これまで個人事業だった為、仕事で使う経費も多かったかもしれませんが、大幅に軽減出来ています。

お仕事が個人事業から正社員でのお勤めとなるなど、大きな変化がありましたが、生活や運用面の大幅な見直しをされ、年間貯蓄についても、約50万円程度の減少にとどめるなど、しっかりとされていると思われます。

今後については、公的年金も含め、ある程度収入の予測がついているので、老後に向けて今の貯蓄額で足りるのかどうか、運用についてもiDeCoやNISAなどの制度は最大限活用していますが、どのくらいの期待リターンを目指すかなどを定めていく必要があります。一つずつ考えてみましょう。

送りたいライフスタイルから生活費を割り出す

将来に向けての準備において、まず重要なのは“どれくらいの生活費が必要か”です。すなわち、どのような老後の生活を送りたいかを描くことが大事となります。

ご相談者は、「将来、人や行政に迷惑を掛けないように生きていくための準備で精一杯であり、何のために生きているのかわからなくなってきている」とのことで、具体的にどういう生活を送りたいかというビジョンがまだ明確でないようです。特に特別なことを考えなくても大丈夫です。家族や友人達とワイワイ楽しく過ごしたいという方もいれば、ひとりで家でゆったり過ごすのが心地よいという方もいらっしゃいます。今の生活を参考に、将来ご自身のスタイルに合った過ごし方をしていく為に、どれくらいの生活費が必要かを棚卸ししてみましょう。

運用でどれくらいの期待リターンを目指す必要が?

以下のキャッシュフロー表は、現状の生活費を継続し、年平均4%で資産運用した場合のシミュレーションです。

仮に、手元の貯蓄及びこれから貯めていく金額の半分を運用していく場合、年平均で4%で運用出来れば大体85歳まで生活出来る計算となります。

すなわち、ご相談者の目標とされる85歳までの生活を考えると、今後運用していくにあたっては、年間4~5%程度の期待リターンを目標にポートフォリオを組んでいくと良いでしょう。

貯金できる期間の過ごし方がその後のライフスタイルを左右する

今回は現状の家賃や生活費を前提にシミュレーションを作成してみました。

実際には、リタイア後の生活費を考える際に、家賃の安いエリアへの引っ越しにより家賃を下げることも可能かもしれません。一方で医療費など今までより負担が増える可能性もあります。

何のために生きているか、これは多くの方が悩むことであり、正解がある訳でもありません。今の考えと10年後の考えが同じとも限りません。今出来ること、考えられることから最大限の準備をしながら、その時々に最適な選択をしていきましょう。

貯蓄出来る期間が約15年あります。この15年をどう過ごすかで、その後のライフスタイルや選択肢が決まってきます。老後準備の個別のご相談も増えてきています。将来への不安は、見えないことに対する不安であることがほとんどです。

ご相談者も、ぜひ現段階でのリタイア後の生活をイメージし、どれくらい生活費が掛かるか想定した上で具体的なシミュレーションを行なってみてください。

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