【高校野球】選抜出場校の相次ぐ敗戦に「足をすくわれないように」 中京大中京が締める“兜の緒”

ベンチで戦況を見守る中京大中京・畔柳亨丞(中央)【写真:間淳】

先制を許す展開も…結果的には大差「足をすくわれないように戦いたい」

波乱は起こさせない。今春の選抜出場校が次々に姿を消す全国高校野球選手権の地方大会。愛知大会では22日、4回戦に臨んだ選抜4強の中京大中京が先制を許したものの、名古屋市工に7-1で勝利した。今大会、まだ登板機会がないプロ注目の最速152キロ右腕・畔柳亨丞(くろやなぎ・きょうすけ)投手(3年)は、全国の強豪校の勝敗やライバル投手の動向を気に掛けながら、マウンドに立つ時へ備えている。

具志川商(沖縄)に下関国際(山口)、仙台育英(宮城)。今春の選抜出場校が、夏の地方大会で次々に敗れている。中には、初戦敗退やコールド負けしたチームも。“波乱”という言葉が全国で飛び交う今夏、愛知・岡崎市民球場にも、そんな空気が漂った。

中京大中京は初回1死満塁の先制機をつくる。しかし、5番打者が併殺打に倒れ、無得点に終わった。2回も先頭が出塁したものの、続く打者が併殺打。その後にできた一、二塁のチャンスも生かせなかった。

好機を逃した直後の3回表、中京大中京の先発・大矢琉晟(りゅうせい)投手(3年)は2死一、三塁のピンチを招く。名古屋市工の2番打者にとらえられた打球は三遊間を抜け、先制点を許した。

ざわつく球場の雰囲気を払拭したのは、その裏の先頭打者、2番・桑垣秀野外野手だった。「嫌な試合展開だったので、塁に出ることが必要。できれば長打で勢いをつけたい」。バットのやや先に当たった打球は左翼の前へポトリ。好判断で一気に二塁まで進み、その後の2得点につなげた。4点リードの6回には、2死から公式戦初本塁打。勝利を呼び込む一発にも「どのチームも“打倒・中京大中京”で向かってくる。全国で選抜出場校が敗れる波乱が起きているが、足をすくわれないように戦いたい」と慢心はなかった。

ブルペンで投球練習を行った中京大中京・畔柳亨丞【写真:間淳】

エース畔柳は全国の強豪校の動向をチェック「試合前の準備がすごく大切に」

桑垣の活躍もあって点差が開いたため、畔柳に登板機会はなかった。「3点差くらいならいく」と高橋源一郎監督から指示を受け、8回からは一塁側のブルペンで投球練習。敗退したセンバツ準決勝以来となる公式戦のマウンドに備えた。

畔柳は全国の強豪校の動向をチェックしながら、甲子園に向けたイメージを膨らませている。前日21日は千葉大会の決勝をスマートフォンで確認。延長13回に試合を決める満塁弾を放った専大松戸の吉岡道泰外野手にLINEで「おめでとう」と送った。選抜の1回戦で対戦後、吉岡から「優勝してくれ」と声をかけられ、連絡を取り合うようになったという。そして、仙台育英などの選抜出場校が早々に姿を消す地方大会の結果に「敗れたチームは力を出し切れなかったと話している。試合前の準備がすごく大切になってくる」と気を引き締める。

甲子園出場に加えて、畔柳のモチベーションを高めているのが、全国で活躍する剛腕投手たちの存在。ドラフト上位候補の高知・森木大智投手や、世代最速157キロをマークしたノースアジア大明桜・風間球打投手らの同級生をライバル視し「2人とも勝ちたい気持ちがにじみ出ている。ただ、世代ナンバーワン投手を譲るつもりはない」と揺るぎないプライドを口にする。

プロからの評価が高く、右投手が豊作と言われる現在の高校3年生。その中でも、自身がナンバーワンであると証明するため、畔柳は準備を整えている。(間淳 / Jun Aida)

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