“生物多様性” 田んぼは守れるか… 広島・世羅町で調査

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広島・世羅町の田んぼで、ある調査が行われました。「生物多様性で害虫から田んぼを守れるか」というものです。さまざまな生き物がいる田んぼを薬剤などを使わず「そのままにしておいたらどうなるのか?」という調査です。

世羅町田打地区の田んぼです。稲の害虫調査が行われていました。探しているのは、ウンカです。

「まず成虫がいるので、見取りで見た後に幼虫がとまっているのは見えないので、たたいて、こうやってたたいて、ここに落として見るという感じですね。」(広島県総合技術研究所 星野滋さん)

ウンカは、夏と秋に前線に乗って中国からやってきます。根元から栄養を吸ってイネの成長を妨げ、枯らしてしまうこともあります。

星野さんは、こういった害虫の防除を研究しています。

「きょうは全然、いない。ゼロです。」(星野滋さん)

水源に近い3か所の田んぼには4年間、殺虫剤を使っていません。世羅町と三原市にしか生息していない貴重なチョウ「ヒョウモンモドキ」の生息地になっているからです。

星野さんは、この田んぼを管理する農事組合法人「さわやか田打」から調査を依頼されました。殺虫剤を使わない田んぼで害虫が発生したらどうなるのかを知るためです。

「最初はちょっといたんですけど、ツマグロヨコバイという。結局、その天敵のクモとか、そういうのが食べてしまうので、ほとんどいなくなったんだろうと。」(星野滋さん)

田んぼにつながっている「ひよせ」と呼ばれる水場には、ハッチョウトンボやモートンイトトンボがいました。昔、田んぼ周辺には5000種類もの生き物がいたといわれています。

「いろんな豊かな生態系があるうえでヒョウモンモドキを守るという形にならないと、なかなか分布する域が広がっていかないかなと思いますね。」(星野滋さん)

星野さんは、多くの生き物が関わり、共生する「生物多様性」が、害虫の大量発生も食い止めることができると考えています。

「害虫だけがドーンと増えるっていうのが、ある程度まで抑えられるという。ほかの天敵とか、いろんなものが競争相手もいたり、そうしたら増えにくくなる。」(星野滋さん)

ヒョウモンモドキの保全活動を学んでいる世羅高校農業経営課の生徒が見学にやってきました。まずは害虫調査を体験です。

「稲の害虫といわれるウンカは、全然、ここについていません。しっかり田んぼを見て、防除していけば、このまま、もしかしたら何もまかなくても最後まで行ける可能性が非常に高い。」(星野滋さん)

さわやか田打の岡田以得さんが、調査の結果を聞きに来ました。

「全体に虫も来てないけえ、よかったということでしょうね。」(さわやか田打 岡田以得さん)

しかし、ことしの結果だけで殺虫剤を使わない範囲を広げるのは難しいそうです。

「毎年毎年のことですから、ことし、よくても来年はわからん。やっぱり農家っていうのはやっぱり不安は払しょくしておきたいですから。」(岡田以意さん)

生き物調査では、捕まえた生き物を見て、驚いている生徒がいました。

「サンショウウオのようなやつが…」(世羅高校の生徒)

これは、アカハライモリの子どもでした。わずかな時間でヒメゲンゴロウやタイコウチなどを捕まえることができました。

「生き物のことをしっかり考えていて、自分たちだけじゃなくて、自然のことや環境のことを考えて、豊かにしていこうという考えはすごくいいなと思いました。」

「有機農業を目指してやっています。殺虫剤を使わないっていうのは有機農業、まあ条件は同じような感じなので、今回の授業は大切だなと思いました。」(世羅高校の生徒たち)

「生き物を守りながら農業も両立させるような形に持っていければ、保護活動も広がっていくのではないかと思って、こういうことをやってます。」(広島県総合技術研究所 星野滋さん)

生物多様性を守り、安定した収穫を得る農業を目指して、星野さんの研究は続きます。