【東京五輪】組織委崩壊を予見していた14通の〝闇メール〟

本紙に送られてきた東京五輪に関してのメールの一部(一部加工)

大逆風の船出だ。新型コロナウイルス禍で史上初の1年延期となった東京五輪が23日に国立競技場で開幕。招致決定からさまざまなトラブルが尽きず、開幕前日も開会式の演出を担当した元お笑い芸人の小林賢太郎氏(48)が過去にユダヤ人大虐殺をコントにしていた問題で解任された。もはや大会組織委員会は崩壊寸前だが、実はそれを予見する〝内部告発〟が…。延期決定後から約1年半、組織委を名乗る人物が本紙に計14通ものメールを送付していたのだ。その衝撃的な〝闇メール〟が訴えたかったこととは――。

招致決定以来、ここまでトラブルが多発した五輪は史上類を見ない。国立競技場の建設費問題に伴うデザイン変更に始まり、大会エンブレムの盗作疑惑、日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和前会長の不正疑惑、マラソン競歩の不可解な札幌移転…と、これだけでも十分に呪われているが、コロナ禍で1年延期すると笑い話では済まされなくなる。

延期によって運営の甘さやコロナ対策の〝穴〟が露呈し、世論調査では国民の大半が中止を支持。次第に組織委は空中分解していった。今年に入って森喜朗前会長の女性蔑視発言、開閉会式の演出を統括するクリエーティブディレクター佐々木宏氏による侮辱的な言動、極め付きは開会式直前の辞任・解任〝3連発〟だ。

19日には開会式の楽曲担当を務めた小山田圭吾が学生時代の〝いじめ自慢〟が問題視されて辞任した。また、文化プログラムのイベントに出演予定だった絵本作家・のぶみ氏が過去にいじめを著書につづっていたなどと批判されて辞任。さらには、開会式の演出を手掛けた元お笑いコンビ「ラーメンズ」の小林賢太郎氏も以前にユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を題材にしたコントを発表していたことが発覚。ネット上での大炎上と海外からの猛批判を受けて、開会式前日に解任される異常事態となった。

もはや組織委は制御不能に陥っているが、その予兆を本紙はキャッチしていた。「組織委に勤務している」と名乗る人物から約1年間に14通の〝内部告発メール〟が届いていたのだ。

1通目は延期決定から約3か月後の昨年6月。組織委内で「中止」が禁句となり、交渉の席でスポンサーが撤退をにおわせていることが赤裸々に記されている。

さらにメールは断続的に届き、森前会長の思い付きによる指示で疲弊する現場職員の恨み節、IOC幹部に対する特別待遇の実態、組織委幹部の傲慢な態度によってスポンサーがブチ切れた生々しいやり取りなどもつづられていた。具体的な描写や固有名詞を鑑みると内情に精通し、限りなく中核に近い人物であることがうかがえた。

本紙は情報確認のため何度も接触を試みたが、すべて短時間でアドレスが無効となる限定メールで直接取材が実現できず、これまで報道を見送ってきた。

ただ、告発内容が真実であると証明された出来事もあった。昨年7月、当時は聖火の保管場所がトップシークレットだったが、メールには具体的な施設名と住所が記載され、国立競技場の1年前イベントに合わせてJOCビルに搬送される日時も暴露。本紙は記された都内の行政施設に足を運び、同時刻に待ち構えていると実際に聖火は運ばれてきた。現場にいた警視庁関係者に裏を取ると、間違いなく保管場所も搬送時刻も当たっていたのだ。

さまざまな極秘情報が書かれた14通のメール。ではなぜ、この人物はこうしたメールを送ってきたのか。それは文末に書かれていたことで、〝本音〟が読みとれる。

「組織委の職員になり、五輪の裏がよく分かった」「今後競技を見ても一切、感動しないでしょう」「もっと世論が中止に傾いてほしい」「負の遺産を次の世代に残さないためにも、一日も早い中止を願う」

崩壊寸前の現状を危惧していたこの心の叫び。本紙はこれに応えて今回公開に踏み切ったが、東京五輪が多くの〝闇〟を抱えながらスタートを切ったことは間違いない。果たして、どのような結末を迎えるのだろうか。

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