侍ジャパンに降って湧いた“ギータ問題” 「投手1増」が選手起用に及ぼす影響も?

侍ジャパン・柳田悠岐【写真:宮脇広久】

「投手1増」のチーム編成…代打や守備固めなど選手起用に影響も

東京五輪の野球競技開幕へ向け、仙台市の楽天生命パーク宮城で強化合宿(一般非公開)を行なっている侍ジャパン。24日には楽天、25日には巨人を相手に強化試合を行う。気がかりなのは、右脇腹の違和感で別メニュー調整が続くソフトバンク・柳田悠岐外野手の状態。稲葉篤紀監督は、場合によっては強化試合もギータを欠場させ、文字通り“ぶっつけ本番”で五輪に臨ませる可能性も示唆している。

柳田は合宿初日の19日から3日連続でフリー打撃を回避。稲葉監督は「大事を取ってというか、本人は『やれる』と言うけれど、無理をするところではないので、我慢してもらっている」と強調。ただ、必ずしも楽観はできないようだ。

合宿3日目には室内練習場でティー打撃を再開したそうで、見守った稲葉監督は「ようやくバットを持てて、すごくうれしそうでした。思ったより振れていた」と評したが、関係者以外立ち入り禁止のエリアで、報道陣に実際の強度はうかがい知れなかった。

五輪の初戦となるドミニカ共和国戦(福島あづま球場)が28日に迫っているが、稲葉監督は柳田の起用について極めて慎重だ。24日と25日の強化試合についても「本当にそこに出てもらうことが、いいのかどうなのか」と欠場も視野に入れている。

仮に強化試合出場を回避すると、五輪には“ぶっつけ本番”となるが、指揮官は「彼も(他の選手のフリー打撃中に)ランニングがてら、ボールを拾ったり捕ったりして、走っている。走り込みは十分できているので、体のキレはあると思う」と説明。「本人と話しながら慎重に決めていきたい」と言葉を選んだ。

センター本職は柳田のみ、鈴木&近藤が練習を始めるも…

柳田は押しも押されもせぬ主軸だけに、強化試合を欠場するだけでも、チーム全体に与える影響は小さくない。出場選手の中で、センターを本職としているのは柳田ひとり。他に今季ペナントレースで中堅を守った選手はいない。

柳田の別メニュー調整を受けて、広島・鈴木と日本ハム・近藤がセンターの位置でノックを受け始めたが、2人とも経験は浅い。鈴木は昨季、試合途中のシート変更で中堅に回ったケースが2度あった。近藤に至っては、プロ入り後公式戦でセンターを守ったことはないが、実は2019年のWBSCプレミア12開幕前の練習試合でも、稲葉監督の意向で途中から中堅に回ったことがあった。

強化試合では代打、代走、守備固めなど、本番を想定して様々な起用を試したいところだが、稲葉監督は「ギータ次第でね。野手が1人減れば、12人しかいなくなるので、なかなか、代打を出して代走を出してとかって、簡単にはできないというか……」とジレンマを抱えている。

もともと、代表選手24人の内訳は、2008年北京五輪では投手10人・野手14人だったが、今回は稲葉監督が小刻みな継投を志向していることから、投手を11人に。野手は1減となった経緯があるから、なおさらだ。降って湧いた“ギータ問題”が、侍ジャパンのアキレス腱とならないためにも、難しい判断が迫られる。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2