障害者用駐車スペースに健常者の車…困る 防止制度 十分に定着せず 長崎県「広報に力入れる」

スーパーの駐車場でパーキングパーミット制度を利用し、フロントガラスに利用証を掲示して車を止める障害者=長崎市内

 車いすマークの描かれた障害者用の駐車スペースに健常者が度々車を止めていて、知人の障害者が困っている-。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)に、長崎県南島原市の男性(60)から投稿が寄せられた。個人のモラルの問題と言えそうだが、男性は「こうした行為を防止するための県の制度が十分に定着していない」とも指摘する。

 まちなかで見掛ける車いすマーク(正式名称・国際シンボルマーク)は、障害を持つ人が利用できる建築物や施設であることを示している。マークの運用を担っている日本障害者リハビリテーション協会(東京)によると、マークは駐車場管理者の判断で駐車スペースの地面などに描くことができるという。ただ健常者が駐車するケースは後を絶たない。

 ◆2種類を交付

 これを問題視した長崎県は2007年8月から、一定の条件を満たす障害者らが希望すれば利用証を交付し、駐車場の専用スペースに車を止める際にフロントガラスなどに掲示してもらうパーキングパーミット(身障者用駐車場利用証)制度を導入した。協力施設は駐車場に専用スペースを示すシート(A3判)を掲示。同制度は利用する側と専用スペースを設置する協力施設側の条件が満たされて成り立つ。

 利用証は▽身体障害者、高齢者、知的障害者、難病者用(有効期間1年以上)▽妊産婦、けが人用(同1年未満)-の2種類、合わせて年間約3千人が県内で交付を受けている。5月現在、専用スペースを設けている協力施設は県内730カ所。

 ◆運用「不適切」

 しかし投稿してきた男性によると、制度を十分理解していない協力施設が多いという。その上、「利用証を掲示していない福祉車両が専用スペースに止まっている事もある。適切な運用がなされているとは言い難い」と指摘する。

 長崎市内のスーパーの駐車場で利用証を掲示して専用スペースに車を止めていた男性(74)は「場所によっては、専用スペースに利用証のない車が止まっていて、駐車できなかったことが何度かある」と不満を口にする。

 ◆邪魔なことも

 佐世保市肢体障害者協会相談役の村山隆之さん(64)は「協力施設によっては一般車両が止められないようコーン
などを立てて、専用スペースを確保している。しかし障害のある利用者にとっては駐車する際、逆に邪魔になることも
ある」と言う。

 障害者のための駐車スペースを障害者にいつでも利用してもらうためにはどうしたらいいのか。県福祉保健部の熊由
香里係長は「同制度が広く浸透するよう広報に力を入れるとともに、専用スペースの適切な運用を協力施設側に呼び掛
けたい」と語る。(柿野朋之)

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