<レスリング>【2021年全国高校生グレコローマン選手権・特集】日本とイランのハイブリッドで、マット界の“アラシ”となるか…92kg級・吉田アラシ(埼玉・花咲徳栄)

 

(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)

初めてのグレコローマンの試合で優勝した吉田アラシ(埼玉・花咲徳栄)

 「差しや組み手からポイントにつなげられたことが、優勝できた要因だと思います」

 滋賀・大津市のウカルちゃんアリーナで開催された2021年全国高校生グレコローマン選手権の最終日。92㎏級では吉田アラシ(埼玉・花咲徳栄)が優勝した。実は、グレコローマンの大会に出るのは今回が初めて。吉田は「フリースタイルに比べると、ちょっと難しい」と吐露した。「フリーではいつも足を触っているので、足を触らないで上半身だけで闘うのは難しかった」

 6人兄弟の4番目。兄は日大で活躍する吉田ケイワン選手。2019年に国体と全日本大学選手権を制した強豪だ。父・ジャボ・エスファンジャーニさんは千葉・市川市で「市川コシティ・クラブ」を主宰するレスリング一家。

 「兄弟は全員レスリングをやっていた。3番目は途中で辞めました。それ以外はまだ全員やっています」

 母は日本人で、吉田は日本で生まれ育った。意外にも父の母国であるイランにはまだ行ったことがないという。「(同国の公用語である)ペルシャ語もしゃべれない」

兄・ケイワンの進んだ高校を選択

 イランにおけるレスリングの地位は高く、サッカーに次ぐ人気を誇るとも言われている。ジャボさんのDNAを継ぐ吉田は、パソコンを通してイランのレスリングに触れることも。

 「ユーチューブで検索して出てきた映像を見たりしています」

6試合中5試合でテクニカルフォールという優勝だった

 兄・ケイワン選手の影響は強く、差しのやり方は兄のそれを真似ている。「今回は一緒に練習することはなかったけど、それがうまくいってよかった」

 花咲徳栄高に進学した理由も「兄の母校だったから」だ。「兄が通って好成績を残していたので、僕も強くなりたいと思って、この高校に進学しました。確かに練習はきついけど、耐え抜いたら強くなれたのでよかったです」

 次に出場するインターハイからはフリースタイルに戻る予定。「僕はフリースタイルでも組み手を使って相手を崩す戦法が得意。次にグレコローマンに挑戦するのは大学に進学してからになると思うけど、グレコローマンでもその組み手が使えたらいいと思う」

 父・ジャボさんとは、今でもたまに一緒に練習する。日本とイランのレスリングをハイブリッドさせた闘い方を武器に、これからもマット界の“アラシ”となるか。

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