子どもの命と水の事故 ライフジャケットの着用有無が生存率に影響 専門家は義務化訴え

子どもの命を水難事故から守るために必須のライフジャケット。体にフィットして脱げにくいモデルが推奨されている=横浜市西区の「モンベル リーフみなとみらい店」

 夏本番を迎え、海や川などでのレジャー機会が増える。忘れてならないのは水難事故の危険と隣り合わせという現実だ。とりわけ、子どもの命を守る装備として、専門家はライフジャケットの有効性を強調、12歳以下の着用義務化を訴える。

 警察庁によると、2020年に水難事故に遭った中学生以下の子どもは全国で176人。うち28人が死亡した。子どもの場合は河川での水遊び中の重大事故が目立つ傾向にあるという。神奈川県内でも1人が死亡、3人がけがを負った。

 全国ではここ数年、毎年20~30人ほどの子どもが水難事故で犠牲になっており、後遺症を負うケースも後を絶たない。

 横浜市泉区で小児科医を開業し、あらゆる事故から子どもを守るために活動するNPO法人「Safe Kids Japan」の山中龍宏理事長(73)はこうした現状に心を痛める。一方で「予防可能な事故も多く、適切な備えをすれば被害を軽減できたケースがある」とみる。

 最も重要視するのがライフジャケットの着用だ。海上保安庁によると、16~20年に船から海中へ転落した事故での生存率はライフジャケットの着用者は89%に達した。逆に着用していなかった場合は48%に低下した。

 山中理事長は「子どもに限らず、ライフジャケットの着用が命を守ることに直結するのは明白。とりわけ、身を守るすべに乏しい12歳以下の子どもに対しては海や川、遊泳施設でのライフジャケット着用の義務付けが必須だ」と力を込める。

 同法人は20年に、12歳以下のライフジャケット着用義務化に関するプロジェクトを発足させ、国などに働き掛けを強めている。

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