【TOKYO輪舞曲】選手の笑顔に心晴れる 下野新聞記者が見た五輪開会式

東京五輪の開会式で、旗手の八村塁を先頭に入場行進する日本選手団=23日夜、国立競技場

 午後8時、夜空を照らすように国立競技場の大型スクリーンが輝きを放った。映像の中で、新型コロナウイルスなどを象徴する高い石壁をアスリートたちが越え、壊していく。カウントダウンが始まる。ゼロで花火が打ち上がり、世界にスイッチが入った気がした。

 荘厳な演出で飾られた開会式。収容6万人を誇る杜(もり)のスタジアムで式典を見守るのは関係者だけだ。歓声はない。空席が目立たないよう工夫されたモザイク状の観客席が、その役目を果たすとは。次々と繰り出される映像と音楽の美しさに引きつけられつつも複雑な思いが込み上げた。

 国旗を運び込んだのは過去の五輪メダリストと、未来を担う若きアスリート、そして今の日本を支える医療従事者。開幕を彩るさまざまなパフォーマンス。勇ましく、たくましく、壮大に日本文化が表現され、五輪エンブレムが完成した。

 入場行進曲は人気ゲーム「ドラゴンクエスト」でスタート。ギリシャを先頭に、アルファベット順ではなく五十音順に各国選手団が入ってくる。小旗を振り、手を振り、スマートフォンで動画を撮影しながら歩く選手たち。最終206番目に155人の日本選手団が登場した。

 1964年東京五輪とは逆の配色となった白のブレザー、赤のズボンが映える。県勢も飛び込みの榎本遼香(えのもとはるか)が最初に姿を見せると、ホッケーの狐塚美樹(こづかみき)、バスケットボールの比江島慎(ひえじままこと)、クレー射撃の石原奈央子(いしはらなおこ)も元気に入ってきた。

 新型コロナ感染拡大により1年延期され、異例の無観客で幕を開けたスポーツの祭典。緊急事態宣言が発令され、混乱は続く。だが、選手たちの笑顔を見て心が晴れた。世界のトップアスリート、そして過去最多15人の栃木県勢が繰り広げるドラマが、楽しみになってきた。

東京五輪が開幕し、国立競技場で打ち上げられる花火。緊急事態宣言下、無観客で行われた=23日夜(魚眼レンズ使用)

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