〝投げられ役〟二人三脚で金メダル狙う 東京五輪柔道女子・阿部の付き人・森さん(合志市出身)

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5月のGSカザン大会(ロシア)で優勝し、喜ぶ阿部詩(左)と、付き人を務める森和輝さん(近畿医療専門学校提供)

 東京五輪柔道女子52キロ級で優勝候補の阿部詩(21)=日体大=を支える人がいる。熊本県合志市出身で日体大非常勤職員の森和輝さん(23)は熊本で教員になる夢をいったん封印し、世界女王に畳に投げられる道を選択。専属の付き人として二人三脚で金メダルを狙う。

 森さんは小学2年から柔道に励み、鹿本高から名門・日体大に進学。2018年の全日本ジュニア選手権で準優勝など実績を残している。

 2人をつないだのは、詩の兄で同男子66キロ級代表の一二三(23)=パーク24=だ。大学の同級生で大の仲良しだった森さん。詩とは階級も近く、19年夏ごろから練習パートナーを務めるようになった。

 19年11月のグランドスラム(GS)大阪大会が一つの転機となった。16年12月にシニアの国際大会初参戦以来、海外勢に連戦連勝だった若き女王がつまずく。優勝すれば五輪代表に内定する大一番だったが、決勝でまさかの敗北。国際大会初黒星を喫し、帰りのタクシーでも号泣する姿を目の当たりにした。

 自身の研究不足ではないかと責任を感じたという森さん。負けた相手の動きに目を凝らし、組み手練習では仮想敵になりきってみせた。成果は実を結び、詩は20年2月のGSデュッセルドルフ大会(ドイツ)決勝で同じ相手に雪辱した。

 森さんは帰国後の祝勝会で「一緒に7月(五輪)まで戦ってください」と打診された。大学卒業後は教員を目指すつもりだったため悩んだが、「この経験は今しかできない。何より、一緒に戦いたかった」と、専属の付き人になることを決意した。詩が治療などで世話になっている近畿医療専門学校(大阪市)の金銭的な支援もあり、付き人を仕事にする体制が整った。

 付き人は選手の練習相手、補食の準備、スケジュール管理などを担う。選手が平常心で試合に臨めるようにするのも重要な役割で、信頼感が欠かせない。

 妹のような相棒は25日、日本中の注目を集めて大舞台に立つ。森さんは「重圧を感じる姿も見てきた。楽しんで、目標を達成してほしい」。得意技の袖釣り込み腰や内股が決まるように、気持ち良く豪快に投げられて畳に送り出すつもりだ。(嶋田昇平)