【解説】韓国代表の弁当支援、平昌を含む過去五輪でも実施...「福島県産ありき」報道は当たらず

東京オリンピックに参加する韓国代表選手のために、大韓体育会が韓国人選手専用の給食支援センターを設置していることに対して、日本のマスメディアなどで「福島県産を避けるためのもの」という批判的な報道が出ている。

韓国の聯合ニュースは24日、大韓体育会などへの取材をもとに、給食センターはこれまでも(平昌冬季五輪も含め)五輪開催時に現地で設置されており、福島県産を忌避する目的によるものでないと報じている。

聯合によると、大韓体育会は2012年ロンドンオリンピック、2014ソチ冬季オリンピック、2016リオデジャネイロオリンピック、2018平昌冬季オリンピックでも給食支援センターを設置し、選手たちの食事や弁当をサポートしており、2004年のアテネでは給食センターこそ設置しなかったものの、栄養士調理師を派遣したという。これらは選手たちから好評だったという。

聯合は、「(東京の)給食支援センターは、福島産食材への懸念があるだけに、福島県近隣の8つの県を除く地域の食材のみを購入し、残りの食材も放射能セシウム測定器で検査をすることは事実だ」としつつ、「福島県産の食材を活用していないのは事実だが、そのために給食支援センターを準備したと言うことはできない」と指摘した。

なお、給食支援センターが提供する食事は、選手やチームが希望する場合のみ支給されるもので、そうでない場合は、選手村の食堂で出される食事をとっているという。

風評被害という観点からみれば、日本人にはまだスッキリしない感情が残るかもしれないが、韓国の給食支援センターが福島県産食材を前提に作られたという言説は事実に基づいていないことから、(垂れ幕の問題を含め)それらを混同して語ることは慎むべきだろう。

ちなみに、韓国の文化体育観光部のファン・イク長官はこの日、給食支援センター対して、福島県産食材を食べるなと指示したことはないと述べている。一方で韓国政府は震災後から放射性物質の漏出を理由に福島県など8県産の水産物について輸入を制限している。給食支援センターの食材選びも、そのような「国の基準」に倣った措置であったと考えられる。

ちなみに、韓国政府の輸入制限措置はWTO(世界貿易機関)の紛争パネルでも争われ、1審で輸入制限を不当とする日本の主張が認められるも、2審(2019年4月)で韓国が逆転勝訴している。ただこの勝訴に関しては、韓国側も意外だったようだ。韓国産業省(産業通商資源部)の通商官は後日、同省の公式動画番組において、勝てる可能性は非常に低いと思っていたと吐露している。

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