<レスリング>「見ぬふりはできない」と、架空請求詐欺の振り込みを防ぐ…中京学院大・高橋郁海選手(新潟・八海高卒)

 

(文・動画撮影=保高幸子)

高橋郁海選手=本HP撮影

 中京学院大学レスリング部に所属する高橋郁海選手(4年)が今年の4月6日、コンビニエンスストア・ローソンでのアルバイト勤務中に架空請求詐欺の被害を防いでいたことが分かった。

 高橋選手は新潟・八海高校の出身で、現在は同部の主務。部活動に影響しない範囲で認めてもらっているアルバイトとして、週2回ほどコンビニエンスストアの深夜シフトで勤務している。

 この日の勤務中、70代の女性が電子マネー5000円分の購入に訪れた。午前3時45分。レジで対応した時、「珍しいな」と思ったと言う。女性は慌てた様子だった。普段あまり取り扱わない電子マネーの購入だったこと、そして、その女性の様子から不審に感じた高橋は、はっきり確認する必要があると思い、女性にその電子マネーを購入する目的を尋ねた。

 女性によれば「ブラックリストに載せる」「裁判を起こす」といったメールが数件届いているとのことだった。架空請求なのではないかと思い、「携帯電話を見せていただけますか?」と許諾を得て見たところ、そういった脅しの文言や購入を急かすようなカウントダウンの数字が並んでいた。

支払いたい一心だった女性を粘り強く説得

 女性は家族に知られたくない一心で、深夜のコンビニエンスストアに購入しに来たのだった。

 販売しない方がいいと感じ、帰ってもらおうとしたが、その女性によれば、昼間に同じコンビニエンスストアで購入ができたとのことで、とにかくすぐに買いたいという様子だった。それを聞いて、一度支払ってしまったことで、2度目の請求が来たのではないか、このあとも架空請求は届き続ける、と考えた。

中津川警察署から感謝状を受けた高橋郁海選手=中京学院大提供

 高橋選手は「被害者と思われる人を見て、見ぬふりをすることはできなかった」と言う。「警察に連絡しましょう」と提案すると、女性は大ごとにしたくない、とにかく支払いたい、との様子だったが、粘り強く説得した。

 警察に通報するのは初めての経験だったため、躊躇(ちゅうちょ)もあった。「まず店長に電話し、事情を説明して、警察を呼んでいいのか確認し、そのあと岐阜県警察中津川署に電話しました」-。

 警察が来るまでの間、女性が帰ろうとするのを止め、イートインスペースで座ってもらい、少しでも気持ちが落ち着くようにと話し相手になった。警察が来て説得してくれ、詐欺被害を防ぐことができた。同月19日には、被害を食い止めたとして、中津川警察署から感謝状を受けた。

 高橋選手は現在、就職活動中。この件の以前からも警察官になりたいという思いはあった。「今回、初めて実際の警察の方々のお仕事に接して、頼りになるな、と感じ、警察官になりたいという思いがさらに強くなりました」と話す。卒業後は地元新潟に戻る予定。「交番で地域の人々の生活を守る仕事ができたら」と現在、警察官の試験に向けて勉強を続けている。

(下記は、2020年西日本学生秋季リーグ戦で闘う高橋郁海選手=赤)


© 公益財団法人日本レスリング協会