マイペースな渡名喜風南が見せた大粒の涙 銀メダルの悔しさは3年後パリ五輪で

悔しさをバネに!

柔道女子48キロ級の渡名喜風南(25=パーク24)が日本選手団第1号メダルを獲得した。冬季大会を含めて日本の通算500個目のメダルは、決勝終盤に内股で技ありを奪われディストリア・クラスニチ(コソボ)に敗れて、無念の「銀」。試合後は人目もはばからず悔し涙を流したが、確かな爪痕を残した。

金メダル獲得を目標に2019年1月には自費で単身モンゴルへ渡り、同国の代表合宿に参加。男女合同で練習に励む中で「雰囲気がよくて勉強になった」と刺激を受けた。食事面でも「モンゴルでは、ほとんどが牛肉かラム肉だった。ラム肉はまだ苦手だけど、牛肉は好きになった。食べると一気に力が出るような気がする」とさまざまな場面で変化を求めてきた。

〝精神の成熟さ〟もメダルの要因だ。同階級は柔道の男女全階級で最初に金メダリストが決まる戦いだった。周囲から「金メダル第1号」を期待する声も聞かれていたが「いいスタートを切りたいが、マイペースでやるべきことをやる。挑戦という言葉を常に頭に入れて戦い抜きたい」と己の柔道に集中した。

1992年バルセロナ五輪男子78キロ級金メダルで、所属先の吉田秀彦総監督もこう明かす。「マイペースさは渡名喜のいい部分。自分のペースに持ってこれば自信があるってこと。性格的にもすごい気が強い。やっぱり勝負師は負けず嫌いですよ」と舌を巻く。

別の柔道関係者も「マイペースじゃないと、みんなからマークされてしまう。やっぱり自分がないとダメだから」と評価する。

準決勝で難敵のダリア・ビロディド(ウクライナ)を下しながら、あと一歩届かなかった金メダル。「自分の弱さが出た試合です。しっかりこの負けを自分の中で確かめていきたい。コロナ禍の中でサポートしてくれたみなさんに感謝したい」と涙ながらに語った渡名喜は3年後、パリの地で晴らす。

© 株式会社東京スポーツ新聞社