“中堅代役”近藤にミス、千賀は不安残る2失点…楽天に負けた侍ジャパン大丈夫?

4番手で登板した侍ジャパン・千賀滉大【写真:荒川祐史】

ギータは25日の巨人との強化試合も“打席なし”濃厚

東京五輪に臨む野球日本代表「侍ジャパン」は24日、仙台市の楽天生命パーク宮城で楽天を相手に強化試合を行い、3-5で競り負けた。右脇腹に違和感を抱える柳田悠岐外野手(ソフトバンク)は完全欠場。左足首靭帯損傷の重傷から復帰して間もない千賀滉大投手(同)も、2回2失点で本来の投球からはほど遠く、敗戦投手となった。それでも、28日の五輪初戦となるドミニカ共和国戦(福島あづま球場)は否応なく迫ってくる。

同じく楽天生命パークで25日に行われる巨人との強化試合が、侍ジャパンにとって五輪本番前最後の実戦となるが、柳田は打席には立たない見通し。稲葉篤紀監督は「当日の様子を見て判断したい」と言いつつ、「せっかくここまで我慢してもらったので、(巨人戦で打席に入らない場合は)ぶっつけ本番になってしまうが、そこはギータにも理解してもらいたい」と説明。試合終盤に守備に就くだけにとどめそうだ。

果たして柳田は、五輪のフィールドに無事立つことができるのだろうか。24日の強化試合では、柳田の代わりに中堅でスタメン出場した近藤健介外野手(日本ハム)が、慣れないポジションゆえの拙守を演じた。5回、先頭のディクソンが放ったライナーに対し、いったん左翼方向へ真横に走り、あわててバックしたが、頭上を越され二塁打に。近藤はプロ入り後、公式戦でセンターを守ったことが1度もないのだから無理もない。

稲葉監督は「近藤選手にはああいう打球が来てくれて逆に良かった。本番へ向けて、いい経験になったのではないか」と前向きに語ったが、独特の緊張感に包まれる舞台で近藤に中堅を守らせる事態は、リスクが高い。全ては代表選手中ただひとりセンターを本職とする柳田の回復次第だ。

不安残る千賀「自分の現状を把握することができた」

一方、“病み上がり”の千賀にも不安が募る。4月6日の日本ハム戦で左足首の靭帯を損傷した際、代表入りは絶望視されたが、6月17日の3軍戦で実戦復帰。出場辞退した菅野智之投手(巨人)、中川皓太投手(同)に代わって、伊藤大海投手(日本ハム)とともに追加招集された。しかしその後、7月6日に1軍のロッテ戦に先発し、3回途中9安打10失点と大炎上するなど、本来の投球は取り戻せていない。

この日の強化試合では、7回から2イニング登板。3-3の同点で迎えた8回2死三塁から村林、田中貴に連続四球を与え、ディクソンに真ん中に入った154キロ速球を中前へ弾き返され2点を失った。制球が定まらず、フォークだけでなく、カットボールやシンカーもワンバウンド。捕手の梅野が必死に体でボールを止めるシーンばかりが目立った。

「自分の現状を把握することができた。改めてまだまだな部分が分かった」と猛省。試合で42球を投じたのに続いて、終了後もブルペンで約40球を投げ込み、フォームのバランスの修正に努めた。「今の僕でも生かし方はある。きょう、それが見えた」と気丈に語ったが、結果を出せないまま五輪を迎える可能性がある。本来なら、先発はもちろん、豊富な経験のあるリリーフでも活躍が見込める投手だけに、五輪でどこまで復調できるかは、金メダル奪取の成否を大きく左右する。

稲葉監督は試合後、栗原陵矢外野手(ソフトバンク)と近藤の居残り特打を見守っていたが、突然自らバットを握って打撃ケージに入り、現役時代をほうふつさせる鋭い打球を連発。最後は右翼席へ柵越えも放った。「ギータが打席に立てないなら俺が──」というわけではないだろうが、思うに任せないストレスを振り払うかのように、一心不乱にバットを振る姿が印象的だった。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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