次々と襲うアクシデントもどこ吹く風 巨人・原監督が見せたマネジメント力

2位で前半戦を折り返した巨人【写真:荒川祐史】

首位・阪神と2ゲーム差の2位で折り返し、怪我人続出でも逆転Vの可能性十分

巨人は前半戦を43勝32敗10分けで終了した。新戦力として期待されていたテームズは怪我、スモークは家庭の事情で帰国。FA加入の井納翔一投手も1軍5登板にとどまり未勝利だった。さらに怪我や不振、コロナ禍などで主力が続々とファーム落ちする中、首位の阪神と2ゲーム差の2位につけた。この位置にいるのは、原監督の采配が大きいだろう。

次々とアクシデントが今年の巨人を襲った。開幕戦は勝負所で起用したベテラン・亀井善行外野手のサヨナラ弾で勝利したが、エース・菅野智之投手、主将の坂本勇人内野手、頼みの左腕・中川皓太投手、FA加入の梶谷隆幸外野手が負傷離脱する事態。打撃好調だった吉川尚輝内野手の離脱も痛かった。

それでも原監督は冷静にタクトを振った。現状を見極める眼、勝負勘は誰よりも長けている。その采配力は今年も健在だ。2桁失点して大敗するケースもあったが、勝負への執念を見せて接戦をものにした試合はいくつもあった。

例えば6月20日の阪神戦(甲子園)、2-1と1点リードで7回2死二、三塁のピンチを招いた場面だ。逃げ切りを図りたい原巨人は秘策に出た。代打・北條に対して、投手の高梨はカウント2-2と追い込んだ。次の瞬間、指揮官は鍵谷にスイッチ。相手に考える暇を与えずに勝負に出た。鍵谷は1球で北條を仕留め、試合はそのままのスコアで巨人が勝利した。

不振の丸に命じた2軍調整も長いシーズンを見据えてのゲキ

もしも、初めから鍵谷を投入していたら、左の代打が出てきた可能性もある。これまで積み上げてきたデータをもとに選手をよく見て、起用してきた。一戦必勝の姿勢が現在の位置にチームを押し上げた要因だろう。

菅野の離脱もあり、開幕とは様相が違うが、投手陣では3年目の左腕で球宴にも選ばれた高橋優貴投手が9勝、戸郷翔征投手も8勝と若い2人が先発陣を支えた。ジャイアンツ傘下3Aから6月に復帰し、4戦2勝の山口俊投手も大きな補強となった。中継ぎでは大江竜聖投手や田中豊樹投手らを大胆に起用してピンチを乗り切ってきた。

野手では打率2割2分台と不振だった丸佳浩外野手に2軍調整を命じ、復調させる思い切った入れ替えも功を奏した。不調な選手には刺激を与え、2軍から上がってきたばかりの若手を積極的に起用するのは第2次政権時から変わらない。

その他、野手では前半戦、打率.317、10本塁打の成績を残したゼラス・ウィーラーが開幕当初とはプランの違う2番をこなすなど全力プレーでチームを牽引。梶谷や坂本、吉川が抜けた上位打線でキラリと光ったのは松原聖弥外野手。打率.273、8本塁打の打撃に加え、好守備でチームを支えた。不動の1番として後半戦への期待も高い。

公式戦が中断する中、1~3軍選手による実戦「リアルジャイアンツカップ」を実施するなど、話題を提供しているが、これもこの1か月間で首脳陣が選手の現状をしっかり把握し、勝負の秋に活躍できる選手を見極めている意図が見える。こういう眼が、勝負所の起用につながっていく。前半戦の巨人は球団が掲げる「1team」、総力戦で戦った期間だった。再調整の期間を経て、怪我人が戻り、原監督の采配の引き出しの数が増えれば、リーグ3連覇も自然と見えてくるだろう。(Full-Count編集部)

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