冨安移籍のキーマン? “寝ない男”パラティーニの仕事量と交渉術がエグい

日本代表DF冨安健洋の獲得を狙っているとされるトッテナム。今年から新たなスポーツディレクターとしてファビオ・パラーティチ氏を迎え入れた。

49歳のイタリア人である同氏は、2010~2021年6月までユヴェントスのスポーツディレクターとして辣腕を振るった人物だ。

彼はユーヴェで数々の移籍を成立させてきた。19歳だったポール・ポグバをフリーエージェントで獲得した後、マンチェスター・ユナイテッドに1億ユーロで売却。衰えが指摘されていた当時32歳のアンドレア・ピルロ、PSGとの契約が満了した当時18歳のキングスレイ・コマンもぞれぞれ0円で獲得している。また、カルロス・テベスをユーヴェに連れてきたのも彼だ。

『Guardian』がそのパラーティチ氏のワーカホリックぶりを伝えている。彼に休日や休暇はなく、電話も絶対にオフにしない。電話に出られない時はエージェントや選手、会長といる時くらいのもの。

そのポリシーは、例え自分のクラブと関係なくても、選手や交渉を見失わないことだそう。その理由は、それがどこにつながるか分からないため。

また、「その場にいること」が重要だと考えているため、練習場にいるのも好きだそう。

そのパラーティチと2012~2017年までユーヴェでともに働いたハビエル・リバルタ氏は現在、パルマでテクニカルディレクターを務めている。彼によれば、パラーティチが寝るのを見たことがないそう。

ハビエル・リバルタ(パルマTD)

「彼がいつ寝る時間を見つけられるのか分からない。毎日24時間働いている。そんなのは当たり前さ。

いつもパラーティチから電話がかかってくるのは真夜中すぎだ。昼に電話するようなエネルギーでね!

ファビオは夜でもあらゆる試合を見ている。コパ・リベルタドーレスからコパ・アメリカまでね。どんな試合も見る。

普通はスポーツディレクターやフットボールディレクターになれば、スカウト時代のように若手選手をチェックする時間はない。

だが、彼はそのスキルを決して失くたくないと思っている。常に試合を見て、何も見落とさない。

世界中のあらゆる選手の最新情報を知るために、協力者に電話をかけ続けている」

そんなパラーティチが使う交渉術のひとつがあるという。

それは、ひとつのポジションの複数選手たちと同時に交渉して、ライバルクラブたちを混乱させつつ、自分たちは常にNo.1のターゲット獲得を狙うこと。

ハビエル・リバルタ(パルマTD)

「キングスレイ・コマンをPSGからフリーエージェントで獲得した彼の手腕は決して忘れられない。

6か月間、パラーティチは昼夜を問わずにそれに取り組んだ。

最初は一緒に選手を何度か見にいった。ファビオはコマンに投資する価値があるかどうかを確かめたかったからね。

その後、コマンと契約すると確信するやいなや、彼はコマンや家族、代理人のもとを何度も何度も訪れた。

他の多くのクラブやPSGとの契約更新ではなく、ユヴェントスを選んでもらうためにね。

非常に難しいものだったが、彼のしつこさやハードワーク、その全てのスキルを駆使して、コマンをユヴェントスに連れてくることができた。

彼はまだ18歳だった、今ではバイエルンでスターさ。すごいよね」

また、テベスを獲得する際には午前1時に開店させたロンドンのレストランで秘密裏に会談するなどしたという。

ハビエル・リバルタ(パルマTD)

「(テベス監督のために)パラーティチは何か月も前から極秘で動いていた。

我々は彼のフィジカルがどうなのかを評価しなければいけなかった。

その後、確信したファビオはマンチェスターから信じられない安値(760万ポンド≒11億円)で彼を獲得した。

ユーヴェにとっては、とてつもない取引だった。

自分がユーヴェに入る前に彼が連れてきた選手たちも忘れてはいけない。

ポグバはフリーエージェントだったし、素晴らしいDFだったアンドレア・バルザーリも破格の安値で獲得した。クリスティアーノ・ロナウドまでね…」

「自分は重要なルールを学んだ。その選手が気に入り、その選手を重要だと考えるなら、市場価値より少し高くても払う。その選手を買わなくてはいけないからね。

それはその選手のスキルとポテンシャルに確信を持った時にのみ起きる。

最高の才能があると確信したら、たった数百万でその選手を失うことはできない」

そんなパラーティチは移籍ビジネスでは冷徹だが、同僚たちにとっては気軽に付き合える存在でもあるとか。

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「クラブでの雰囲気が自分にとって非常に重要」という理由で同僚に電話をかけたり、よく食事に行ったりするそう。また、選手たちとも良好な関係を築くことを好むとのこと。

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