【津久井やまゆり園事件】障害者殺傷から5年、犠牲の娘を思う母「美帆に会いたくてたまらない」

犠牲者の名前とヤマユリの花が刻まれた鎮魂のモニュメント=7月20日午前、相模原市緑区の津久井やまゆり園

 相模原市緑区の神奈川県立障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件は、26日で発生から5年がたった。事件で娘の美帆さん=当時(19)=を亡くした母親は「美帆に会いたくてたまらない」との思いを代理人弁護士を通じて報道各社に寄せた。

 事件は2016年7月26日未明に発生。元職員の植松聖死刑囚が施設に侵入し、刃物で入所者19人を殺害、職員を含む26人に重軽傷を負わせた。

 美帆さんの母親は事件から5年に当たり、「最後に会った7月24日に連れ帰っていれば、園がしっかりと植松に向き合っていてくれたならと今も思います」と心境をつづった。

 母親が美帆さんの名を初めて明かしたのは20年1月。匿名で審理される予定だった裁判員裁判の初公判を前に、手記で「美帆は一生懸命生きていました。その証を残したいと思います」との言葉を寄せた。同年7月の手記では「差別は容易になくならないでしょう。でも少しでも減ればいいと思います」との願いを明かしていた。

 事件から5年、障害者に対する差別や偏見は後を絶たない。事件後は優生思想や「命の選別」などについて幅広い議論が交わされ、県も「ともに生きる社会かながわ憲章」の普及を図ってきたが、変化の実感はない。今、事件の風化を防ぎ、いかに共生社会を実現するかが改めて問われている。

 一方、園の再生を巡っては、大規模施設か、地域移行かといった障害者の生き方や望ましい支援の在り方に重い課題を投げ掛けた。今月4日に開所した新園舎は旧施設と対照的な「小規模・分散型」となり、事件を教訓に安全対策を強化。犠牲者を悼む鎮魂のモニュメント(慰霊碑)が設置され、犠牲者19人のうち美帆さんを含む7人の名前が刻まれた。

 再建された園では、8月1日から入所者約50人が新生活を始める。事件後の仮居住先となっている横浜市港南区の芹が谷地域にも定員66人の「芹が谷やまゆり園」が整備され、12月から約50人が入所する予定だ。

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