【柔道】「令和のYAWARA!」阿部詩 兄・一二三も驚く超絶センス&練習量

世界の頂点に立った瞬間、感極まった阿部詩

「令和の三四郎&YAWARA!」の誕生だ。柔道競技2日目(25日、日本武道館)、男子66キロ級の兄・阿部一二三(23=パーク24)と女子52キロ級の妹・詩(21=日体大)がそろって優勝。男女のきょうだいが同時に金メダルを獲得するのは、五輪で日本初の快挙。恩師からは新たな称号を与えられ、早くも連覇への期待を抱かせた。

畳を両手でたたき、全身で喜びを表現した。先陣を切った詩は、決勝で宿敵のアマンディーヌ・ブシャール(フランス)と対戦。ゴールデンスコアにもつれたが、最後は押さえ込んで一本勝ち。同階級で日本人史上初優勝を果たした。

「柔道の申し子」――。この言葉が最も似合う柔道家は詩だ。柔道界では兄の一二三をしのぐセンスを持つと称される。詩が師事する日体大柔道部の山本部長は、2000年シドニー五輪でヤワラちゃんこと谷亮子さん(旧姓・田村)のコーチを担当し、金メダルに導いた名伯楽。間近で国民的ヒロインを見てきたからこそ「やっぱり詩も、田村亮子と同じような実績を作ってほしい。ヤワラちゃんが中学生の時から活躍していたという点は異なるが、十分匹敵する技術力、精神的な強さを持っている。やっぱりヤワラちゃんもすごかったけれど、詩もすごいですよ」と絶賛する。

特に詩の〝吸収力〟は目を見張るものがあるという。山本部長は「本当に天才。だから技を教えようかなというふうに思っても、気づいたらそれをもうやってる。他にもこれが足りないかなというふうに思ったら、それをちゃんと反復で練習していた。もう言う前にできるんですよね」と目を細める。

とはいえ、センスだけで勝てるほど世界は甘くない。稽古への姿勢も超一流だからこそ、世界で結果を残すことができる。かつて詩は「大学生は自分自身との戦い。(稽古は)本当に自分自身との戦いだと思うようになったので、高校生の時よりはだいぶ厳しくなっているのかな」と話していたが、山本部長は「詩は最初から最後まで一切力を抜かずに稽古をできる能力を持っている。本当にすごいです。一二三の集中力もすごいが、詩のほうはそれをもっと長時間やれる。だから一二三はよく詩に『お前やりすぎだろう』って言うぐらい練習しているんですよね」と笑う。あまりの稽古量に山本部長が止めに入ることもあるという。

柔道一筋の姿勢はまさに〝令和のYAWARA!〟だ。詩は「これからもっと努力して素晴らしい金メダリストになれるよう頑張ります」。視線の先には次なる夢が見えている。

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