田辺祭を未来へ 闘雞神社境内で体験イベント

各町が一堂にそろっておはやしのセッション。イベントならではの試みで盛り上がった(25日、和歌山県田辺市東陽の闘雞神社で)

 2年連続で通常開催が中止になった「田辺祭」を体験するイベント「未来に繋(つな)ごう!田辺祭」(実行委員会主催)が25日、闘雞神社(和歌山県田辺市東陽)であった。伝統文化の継承が狙い。おはやしが響く境内は祭りムード一色で、家族連れらでにぎわった。

 田辺祭は闘雞神社の例大祭で、毎年7月24、25日に営まれ、460回以上の歴史がある。笠鉾(かさほこ)や衣笠(きぬがさ)がおはやしとともに市街地を練るほか、早朝の「暁の祭典」や流鏑馬(やぶさめ)があり、田辺の夏の風物詩になっている。

 イベントでは北新町や福路町、江川、本町など各町がおはやしを演奏したほか、浦安の舞や長澤好晃宮司による祭りの解説などがあった。ラストは各町内会による戻りばやしのセッションで「コーライ、コーライ」の掛け声が響き、盛り上がりは最高潮に達した。

 ステージの他にも、和楽器体験、闘雞神社所有の絵巻物の展示などがあり、来場者はいろいろな角度から祭りの魅力に触れた。

 おはやし演奏で出演した北新町の大西秀俊さん(51)は「おはやしは先輩からの口伝で、1年休むと忘れてしまい、歴史を変えてしまいかねない。今年は新人が入り、定期的に練習していたが、イベントが決まってさらに熱が入った」と舞台での演奏を満喫していた。

 大阪府から母親の実家に帰省中の芝野健君(5)は、演奏体験で和楽器演奏に挑戦。太鼓や三味線を手に取り、自分のペースでリズムを奏でた。芝野君は「祭りは大好き。楽器を触って、もっと好きになった。来年は本当の祭りを見たい」と目を輝かせた。

 実行委の榎本将明委員長は「伝統を守るため、コロナ禍でもできることがある。歴史の一ページがつくれたと思う。来年は盛大に祭りが開催されることを願っている」と話した。

おはやしの和楽器を手に演奏を体験する子ども

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