社説:滋賀の美術館 魅力伝える人づくりこそ

©株式会社京都新聞社

 新生美術館計画の頓挫で休館が長引いていた滋賀県立美術館(旧近代美術館、大津市)が、12億円をかけた改修を終えて先月、4年ぶりにオープンした。立地するびわこ文化公園を訪れるファミリー層も入りやすいよう、授乳室やカフェを設け、館名から「近代」を外して再開した。

 子どもたちの素朴かつ本質的な疑問に答えていくような、京都や大阪といった都市部の「とがった展示」とは違ったものを見せたい―と、館長の保坂健二朗さん(元東京国立近代美術館主任研究員)は語っている。

 45歳の保坂さんをはじめ、新たな人材を迎えて若返った県美の再出発に期待したい。

 ここに至るまでには曲折があった。当初は館を建て替え、近現代美術と、県立琵琶湖文化館(大津市)から移管する仏教美術、滋賀ゆかりのアール・ブリュット(障害者など伝統的な美術教育を受けていない作り手による芸術)の「三つの美」を集めて展示する計画だった。世界的に活躍する建築ユニット、SANAAによる設計イメージも公表された。

 しかし、東京五輪に伴う建設資材高騰などの影響で入札不落となったほか、プロジェクトリーダー(館長候補)を県がなかなか決められなかったこともあり、2018年11月に計画を断念。現館の改修へ転じた。

 新装オープンで一区切りついたとはいえ、真価が問われるのはこれからだ。作品にさまざまな角度から光を当て、「滋賀の美」の魅力を十分に引き出してもらいたい。

 一方、当初計画した増改築ができなかったことで、琵琶湖文化館収蔵の国宝17点、重要文化財90点を含む1万1千点の行き場がなくなってしまった。

 県美より20年以上古い1961年築の琵琶湖文化館は、県の財政難などから耐震化もされず、収蔵環境を懸念されながら13年間休館している。収蔵品は主に社寺や個人から寄贈・寄託された書画、仏像などだ。

 地方の人口減少に伴い、今後は地域の守り手を失って自治体に寄せられる品がさらに増えると見込まれる。文化財指定のない品も含めてどう扱い、守り継ぐのか。滋賀に限らず全国に共通する課題といえる。

 県は同館に近い湖岸に新たな展示施設を造り、収蔵品を移す方針だ。地元の大津市などは琵琶湖観光とセットでの誘客を狙うが、かねて湖岸は湿気や水害、地震による液状化の恐れが指摘されている。これらのリスクについて詳細な検討が必要だ。

 併せて忘れてならないのが、作品の価値を見いだし、発信する機能の向上だ。調査研究、修理のためのスタッフを強化、育成したい。住民の相談に乗り、自治体に寄託しなくても地域で文化財を守り続けられるようサポートする機能も求められよう。

 新生美術館は担い手の確保でつまずいた。スタッフをしっかり整えてコレクションに磨きをかけ、いずれ往来が再開される海外や、県内外からの客を、湖国文化の奥深くへといざなってほしい。