今さら聞けない所得税と住民税って何?どう計算すればよいか解説

私たちの身の回りには、買い物やサービスを受けるときに支払う消費税をはじめ、いろいろな税金があります。身近な税金である所得税や住民税は、毎月お給料の中から何となく大きな額の税金が引かれるけれど、実際よくわからないという人が多いかもしれません。

今回は、所得税と住民税の計算の仕方について、わかりやすく解説していきます。


所得税と住民税の違いとは?

税金にはいろいろな種類があり、納付するところ、課税対象、納付する方法などによって分類されています。所得税と住民税の大きな違いは、所得税が国に納付する国税であるのに対して、住民税は住んでいる都道府県や市区町村に納付する地方税というところです。

所得税とは?

このうち所得税は、1年間(1月1日~12月31日)の所得にかけられる税金です。本来は自分で計算して申告・納税するのですが、会社員や公務員の方の場合は、会社が毎月代わりに給料から概算の税金を差し引いて納税しています。そこで、12月になって1年分の給与の額が決まると税額を計算しなおします。これを「年末調整」といいます。自営業やフリーランスの方は、確定申告をして所定の日までに所得税を納付することになっています。

住民税とは?

一方、住民税は前年の所得をもとに計算されます。納付方法は、納税通知書で納付する普通徴収と、給与や年金から天引きされる特別徴収があります。普通徴収の場合、一括または年4回に分けて納付しますが、特別徴収の場合には6月から翌年の5月までの間に分割で納めます。

所得税の計算方法と税率

所得税は、会社からもらう給与や事業で稼いだお金などにかかる税金です。ここでは、会社員・公務員を例にとって説明していきます。

まず、1年間にもらった収入から必要経費にあたる額を差し引いた残りの額が「所得」として計算します。会社員の場合には、収入から必要経費である「給与所得控除」を引きます。給与所得控除は、もらう収入によってあらかじめ決められています。

収入-経費(給与所得控除)=給与所得

給与所得控除

次に、家族の人数や個人の事情を考慮して、給与所得から一定の額を控除します。この所得から控除された金額をもとに税率をかけて税額が決まります。この控除は「所得控除」と呼ばれます。

所得税は、課税所得金額(税金をかける元になる所得金額)が大きくなるにつれ、高い税率が適用される超過累進税率になっています。所得が多ければ多いほど、税金を納めることになります。

(給与所得-所得控除)×税額―控除額=所得税額

所得税の速算表

住民税が決まる仕組み

住民税は、源泉徴収票や確定申告書をもとに、市区町村が計算して税額を決めます。ですから、その年の所得によって、翌年の住民税が決まる仕組みになっています。住民税を納めるのは、その年の1月1日に居住している都道府県・市区町村に納付します。年の途中で引っ越しをしても、1月1日に住んでいた住所地の自治体に納めることになります。

住民税の場合も所得税の計算のように、収入から経費(給与所得控除)を引いて、さらに所得控除を差し引いた課税所得金額を求めるところまでは同じです。ただし、所得控除の金額は、所得税とは異なるものがあります。たとえば、基礎控除は合計所得金額が2,400万円以下の場合は、所得税では48万円ですが、住民税では43万円です。

住民税は一律に課税される「均等割」と、所得に応じて課税される「所得割(税率10%)」に分けられます。住民税の金額は、均等割と所得割を合わせたものになります。

住民税額=均等割+所得割(税率10%)

均等割は本来4,000円ですが、特例で2014年~2023年までの間は、地方自治体の防災財源確保のために金額が引き上げられていて、5,000円になっています。

所得割の税率は、所得金額に関わらず10%です。内訳は市区町村民税が6%、都道府県民税が4%ですが、指定都市の場合には市区町村税が8%、都道府県税が2%と内訳の構成が異なります。

また、住民税は法令の範囲内で独自の上乗せをしていることがあり、自治体によって住民税の金額が異なることがあります。

所得控除ってなに?どんなものがあるの?

所得控除は、税金を納める人の個人的な事情や家族構成などを考慮して、税金の計算に反映させる制度です。所得控除には15種類の所得控除があり、人に対しての控除と物に対しての控除に分類することができます。この所得控除は課税標準から差し引くものなので所得控除額に適用される税率を掛けた分だけ税金が安くなります。

人的控除

税金を納める人の家族構成などの個人的事情に配慮した控除のことで、8つの控除があります。
障害者控除 …納税者本人や配偶者、扶養親族が障害者である場合に受けられる控除
寡婦控除 …所得500万円以下で扶養親族がいて離婚した後婚姻していない人や、所得500万円以下で夫と死別した後婚姻していない人が受けられる控除
ひとり親控除 …ひとり親などで所得500万円以下の場合に受けられる控除
勤労学生控除 …納税者が働きながら通学する勤労学生である場合に受けられる控除
配偶者控除 …一定以下の所得金額の配偶者がいる納税義務者が受けられる控除
配偶者特別控除 …配偶者控除が受けられない場合、条件を満たすことで受けられる控除
扶養控除 …納税者が子どもや家族を養っている場合に適用される控除
基礎控除 …納税者の所得から差し引かれる控除

物的控除

税金を負担する能力や社会政策の観点から設けられているもので、7つの控除があります。
雑損控除 …災害や盗難、横領などによって損害を受けた場合に受けられる控除
医療費控除 …本人や生計を一にする家族が医療費を支払った場合に受けられる控除
社会保険料控除 …年金保険料や健康保険料など支払った金額が控除
小規模企業共済等掛金控除 …小規模共済の掛金やiDeCoなどの掛金に適用される控除
生命保険料控除 …生命保険料を支払った場合に適用される控除
地震保険料控除 …地震保険料支払った場合に適用される控除
・寄附金控除国や地方公共団体などに寄付を行った場合に適用される控除

さらに控除には、申告することによって税額からさらに控除する「税額控除」もあります。税額控除は、計算された税額から直接差し引くことができるので、節税効果が大きくなります。住宅ローン控除や配当控除などがこれに当てはまります。

税金を少なくするために意識的に活用できる「所得控除」

ふるさと納税

任意の自治体に対して寄付をすることで、返礼品がもらえたり、税金安くできたりするメリットがあります。ふるさと納税は寄附金控除なので、1年間に2,000円を超える金額を寄付した際に、超えた金額を本来納める住民税から差し引くことができます。本来は確定申告が必要ですが、寄付した自治体が5か所以下で、確定申告をする必要がない会社員などの場合には、確定申告をしなくていい「ワンストップ特例制度」を利用することができます。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

老後資金を自分で準備するiDeCoは、支払った掛金の全額が所得控除になり、所得金額から差し引くことができます。会社員の場合は、会社の年金制度により異なりますが、毎月1万2,000円〜2万3,000円の掛金を拠出することができ、自営業の方の場合は6万8,000円まで拠出が可能です。ただし、勤務先に企業型確定拠出年金制度がある場合には、加入できない場合もあります。

60歳までは引き出すことができませんが、運用中の利益にも税金がかからず、将来受け取るときも退職所得控除や公的年金控除という税負担を軽くする制度が使えます。

医療費控除

1年間の医療費の合計が10万円(年収200万円未満の場合には年収の5%)を超えた場合に超えた金額が所得控除されます(上限200万円)。受け取った保険金などがあれば、その金額は差し引きます。もし、仕送りなどがあり同一生計であれば、離れて暮らす親の医療費や一定の介護のサービス料も医療費控除になります。

セルフメディケーション税制

職場の健康診断や予防接種を受けている人が、1年間に薬局などで購入した対象の医薬品が1万2,000円を超えた場合、その超えた金額が控除されます(上限は8万8,000円)。医療費控除には金額が届かないという場合に利用するとよいでしょう。


節税なんて会社員だから関係ないと思っている人でも、税金を減らせば「手取り」を増やすことができます。どんな控除が所得から引かれているかに着目することで、節税効果が期待できます。活用できる控除があれば、今年は節税を意識してチャレンジしてみてください。

© 株式会社マネーフォワード