【卓球】みまじゅんペア〝快挙金メダル〟伊藤美誠の新技は「笑いから生まれる」

王国を撃破し日本卓球初の金メダルを獲得した水谷隼と伊藤美誠

悲願の王国撃破だ。東京五輪の卓球混合ダブルス決勝(東京体育館)は水谷隼(32=木下グループ)、伊藤美誠(20=スターツ)組が中国の許昕、劉詩雯組を4―3で下し、日本卓球史上初の金メダルを獲得。自国開催で五輪初採用となった種目で、一度も破ったことがない中国ペアを相手に大仕事をやってのけた。ともに静岡出身で11歳差の〝みまじゅんペア〟はいかにして快挙を達成できたのか。日本協会の宮崎義仁強化本部長(61)が〝金取り秘話〟を明かした。

歴史的勝利の瞬間、2人は喜びを爆発させて抱き合った。3―3で迎えた最終第7ゲーム。8―0とリードして一方的な展開で進むかと思いきや、相手が4点差まで猛追。それでも最後は伊藤のサーブでミスを誘い、壮絶な死闘に終止符を打った。一度も破ったことがないペアから金星を挙げた水谷は「中国という国に今までたくさん負けてきて、この東京五輪で全てのリベンジができたと思います。本当にうれしいです」。また、伊藤も「スタッフさんの応援だったり、たくさんの方が応援してくれて最後まであきらめずにできた。最後まで楽しかったです」と充実の表情だった。

ともに自身初の金メダルとなったが、これは競技が導入された1988年ソウル五輪以降、卓球ニッポンにとっても初の快挙。2016年リオ五輪で銀、銅を手にし、全色コンプリートした水谷は「まだ実感が湧かないというか、夢の世界にいるようです。明日起きた時に、まだそばに金メダルがあればいいな」と冗談を交えつつ、頂点に立った喜びをかみしめた。

同種目は五輪初採用。自国開催で初代王者となるべく、日本協会は熟慮を重ねた。そして19年のワールドツアーで11歳差の静岡出身コンビを起用すると優勝1回、準優勝4回の成績を収めたことで五輪代表に抜てき。コロナ禍でダブルスの練習ができない時期もあったが、不安を感じさせることはなかった。

宮崎強化本部長によれば、水谷は5月ごろから目の色を変えて合宿に臨んでいたという。卓球界のレジェンドとして取材やテレビ出演など広告塔の役割にも積極的だが、かねて集大成に位置づけていた今回だけは特別。宮崎本部長は「たぶん、他の仕事は入れていなかったと思う。これだけずっと朝から晩まで毎日練習場にいて、他のスケジュールを入れないことも珍しい。全日本選手権の出場を回避したのも五輪に合わせて大きな山(ピーク)を持ってくるためだったんだろう」と分析した。

一方で、シングルス、団体戦を含めて計3つの金メダルを目標に掲げる伊藤の強さの秘密を次のように明かす。

「ちょっと笑いすぎなところもあるけど、その一面があるから新しい技が生まれるとも言える。卓球は厳しい練習をコツコツやっても新しい技ができるわけではなく、生真面目にやっても生まれるわけではない。新しい発想は遊びの中からできる。そういう意味では伊藤美誠が一番笑って楽しく遊んでいる」

こうして卓球界の歴史に新たな1ページを刻んだ〝みまじゅん〟ペア。シングルス、団体戦では中国が死にもの狂いになって金メダルを目指してくるに違いない。それでも日本は「卓球王国」の牙城を崩し、勢力図を塗り替えるつもりだ。

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