【柔道】五輪連覇!絶対王者・大野将平は「並外れた強メンタル」

日本男子史上4人目となる五輪2連覇を達成した大野将平

歴史に新たな1ページが加わった。東京五輪の柔道競技3日目(26日、東京・日本武道館)、男子73キロ級決勝で大野将平(29=旭化成)が、2016年リオ五輪に続いて金メダルを獲得。日本男子史上4人目となる2連覇を達成した。「勝って当たり前」。そんな雰囲気の中でも結果を残した大野が、絶対王者たるゆえんはどこにあるのか? 母校・天理大柔道部の穴井隆将監督(36)が、大野が兼ね備える〝凄み〟を本紙に明かした。

やっぱり大野は強かった。決勝のシャフダトゥアシビリ(ジョージア)戦は、互いに決め手を欠き、ゴールデンスコアに突入したが、支え釣り込み足で技ありを奪い、9分26秒に及ぶ死闘に決着をつけた。

昨年2月以来となる公式戦でも影響は一切なかった。周囲から実戦不足を心配する声も聞かれたが、指導する穴井監督は「心配はいらない」と断言。東京五輪に照準を合わせて準備してきた。

さらに、大野は徹底して自らを追い込んだ。「調子の良しあしに左右されずに、むしろ自分の調子が悪いという心づもりをして試合には臨みたい」。本番1か月以上前から取材などを制限して雑音をシャットアウト。思わず柔道関係者たちが「試合まで日にちがあるのに、もう試合モードになっていたら本番までもたない」と懸念を示したほどだった。

それでも大野は己を信じて貫いた。「リオは若さと勢いで勝った金メダルだった。今回は我慢と自分の柔道スタイルで勝ち取れた。やっと胸を張って時代をつくった。歴史をつくったと言えるんじゃないか」。誰にも文句を言わせない姿勢はブレず、見事に結果で応えてみせた。

まさに「サムライ」の振る舞いだ。穴井監督は大野の並外れた〝強メンタル〟に感服。「生まれ持ったものもあるが、彼にメンタルトレーニングは不要だと思う。メンタルトレーニングをするからメンタルが強くなるのではなくて、生まれ持った特性だと思う。また(2015年に閉塾した柔道私塾)講道学舎という弱肉強食の世界を生き延びてきた人間の強さというものを感じる。どれだけ素晴らしい刀や武器を持っていても、結局は心が一番大事。そこがやっぱりブレないというのが一番の強み」と舌を巻く。

大野は畳の外でも学びを深めてきた。新型コロナウイルス禍で満足に練習ができない時期には、00年シドニー五輪重量挙げ日本代表で天理大の職員の菊妻康司氏と駐車場でウエートトレーニングに励み、記録会に出られるほどの腕前にまで上達した。

穴井監督によれば「フォームも結構、完璧らしい。以前『柔道以外でそんなに強くなって、何が面白いの?』って話をした際に、大野は『柔道は自分の専門競技なので、それ以外のことでチャレンジするというか、そこが面白い』と言っていた」。

あえて他競技の選手から学ぶことで、ケガに強い体、外国人の力に負けない強い体をつくり上げた。盗めるものは何でも盗む。「圧倒的存在」から「絶対的存在」へ。この日はまさしく圧倒的な存在感を見せつけた。本紙柔道解説の〝元暴走王〟小川直也氏も「大野君こそ講道学舎の最高傑作。(同塾出身の)古賀(稔彦さん=故人)と吉田(秀彦氏)を超えたよ!」と絶賛する横綱ぶりだった。

とはいえ、大野にとってのゴールはまだまだ先にある。「私の柔道人生はこれからも続いていくので、今後も『自分を倒す』稽古を継続してやっていきたい」。現状に満足することなく、わが道を突き進む覚悟はできている。

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