こだわった「4番大山」…13年ぶり首位ターン 阪神・矢野監督の選手起用を振り返る

首位で前半戦を終えた阪神【写真:荒川祐史】

ルーキーの佐藤輝、中野がレギュラーとして定着

阪神は今季前半戦を48勝33敗3分で終え、13年ぶりの首位で折り返した。交流戦後は9勝14敗1分と少し苦しんだが、それでも首位をキープできたのは開幕ダッシュに成功したから。ここでは、就任3年目の矢野燿大監督の前半戦のポイントとなった選手起用を振り返る。

昨年のドラフト会議で4球団競合の末に獲得した佐藤輝明は序盤こそ打率1割台と苦しんだが、矢野監督はその間もスタメンで起用。前半戦を終えて打率.267、20本塁打、52打点をマークした。三振数こそシーズンワーストを更新するペース(121三振)で量産しているものの、新人離れしたパワーは他球団にとって脅威だ。

ドラフト6位で入団した中野拓夢も走攻守で結果を残し、ショートのレギュラーに。糸原健斗が離脱した時期には2番も務め、盗塁も16個でリーグ3位につける。6月終盤には6試合連続無安打と苦しんだが、矢野監督は我慢の起用。その後見事復調し、11試合連続安打で前半戦を終えた。

投手面では、救援防御率が12球団中11位の4.06と苦しんだことから、柔軟な起用を見せた。開幕から「8回の男」としてプルペンを支えていた岩崎優が6月4日に不調で2軍降格となったが、ファームで先発として登板していた2年目左腕の及川雅貴を昇格させ、リリーフで起用。15試合に登板し2勝1敗2ホールド、防御率1.56と結果を残し、前半戦終盤には勝ちパターンにも食い込んだ。

7月5日には中継ぎで30試合に登板していた岩貞祐太を抹消。代役として岩田稔を昇格させた。開幕投手を務めた藤浪晋太郎も6月に再登録すると、13試合にリリーフ登板。先発防御率は12球団で唯一の2点台の2.95と安定していたこともあり、ローテから外れた先発投手を積極的にリリーフに回す形で、救援陣をやりくりした。

不調でもこだわった「4番・大山」

佐藤輝が新人離れした成績を残す一方で、4番打者として期待された大山悠輔が苦しんだ。前半戦を終え打率.245、10本塁打、43打点。矢野監督は開幕から4番に据え、4月こそ打率.300、5本塁打、23打点と好調だったものの、5月6日に背中の張りで登録抹消となった。

5月25日に復帰後即4番で起用するも、6月は月間打率.197、3本塁打、9打点と不振に陥ると、同29日から6番に。7月6日からは7番に降格させた。奮起した大山は、3試合で11打数5安打の打率.455、2本塁打、5打点と復調の兆しを見せると、同10日から再び4番に戻った。しかし、その後は5試合で19打数2安打と快音が聞かれないまま、前半戦が終了した。

ジェフリー・マルテやジェリー・サンズを4番で起用し続けることもできたはず。それでも矢野監督は「4番・大山」にこだわった。昨季は巨人・岡本和真と本塁打争いを繰り広げ、28本塁打、85打点、打率.288の成績を残し、4番の座を掴み取った。しかしながら、今季は得点圏打率も.213と、勝負どころでの1本が出ていない。リーグ3位の出塁率.400のマルテと、得点圏打率.333のサンズの間を打つ大山がブレーキとなってしまっている。

良くも悪くもチームの成績を左右する「4番打者」。16年ぶりのリーグ制覇へ、主砲の復調は間違いなく必要だ。6月18日には今季最大の8ゲーム差が開いていた阪神と巨人だったが、2ゲーム差まで迫られた。今度は後半戦ダッシュを切るために、重要な五輪中断期間となる。(Full-Count編集部)

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