今、Go Toキャンペーンの再開に注目するべき3つの理由

7月23日に東京2020オリンピックが開幕し、各国選手の熱戦が報じられています。足元では新型コロナ感染症への不安感が解消されず、不透明感が強い状況から株価は苦戦している状況です。秋には衆院選があることも踏まえると、今後、政治面での動きが活発化していくことが予想されます。

岩井コスモ証券では、(1)ワクチンの接種状況、(2)未消化予算及び補正予算の動向、(3)過去最高となった税収、の3つに注目し、今回のコロナ感染症による負の影響を大きく受けた業界を救済する効果が大きいGo To キャンペーンに注目するべきだと考えています。


Go Toキャンペーンは未消化の予算が多い

Go To キャンペーンとは、トラベル、イート、イベント、商店街の主に4つのキャンペーンを通じて、人の流れと街のにぎわいを創り出し、地域を再活性化するための需要喚起を行うものです。新型コロナ感染症の再拡大によって、Go Toキャンペーン事業は中止を余儀なくされており、予算が未消化となっています。

幅広い業界が、新型コロナ感染症による負の影響を長期間に渡って受けています。一方で、2020年度は過去最高の税収60.8兆円と税収見通しを5.7兆円も上回りました。好調な業界も多かったことから二極化が進むK字型経済となっているようです。そのため、K字型経済の是正を図る目的で令和3年度補正予算としてGo Toキャンペーンへの予算追加が期待できるでしょう。

政治面から見ると、東京都議会議員選挙の結果が予想より悪く、自民党の支持率が低迷していることから、支持率回復のために世論に対して受けが良いと見られるGo Toキャンペーンが打ってつけなのではないかと見ています。

先行国ではワクチン効果が発揮されている

ワクチン接種で先行する海外では、各種の変異株が猛威をふるい感染者数がふたたび増加し始めています。一方で、ワクチン接種の目的である重症化や死者を防ぐことには成功しているようです。

ある分析によると、アメリカにおける5月の新型コロナ感染症による死亡者の内、2度のワクチン接種が済んでいた人の割合が0.08%。さらに、入院患者の割合では全体の0.1%となっているようです。

ワクチンの効果が発現している状況を受けて、イギリスではコロナ規制をほぼ全面的に解除しました。この先行事例があることから、日本でもワクチン接種が進めばコロナ感染症による各種要請・制限が徐々に解除されていくことが期待できると見ています。

日本国内におけるワクチンの接種状況は、当初想定されたよりも順調に進捗しています。一方で、足元では要求量と供給量に差異が発生しているようです。状況をざっくりと要約します。

・ワクチン接種記録(VRS)によると、各自治体にワクチンの在庫があるか記録漏れがある。
・9月末までの供給予定量は、2億4,000万回分(1億2,000万人分)で十分な量を確保。
・現在の累計接種数は7月20日時点(7月21日公表)で7,397万回。直近14日間で2,132万回増となり、1日平均約150万回超増のハイペースで接種が進んでいる。
(出所:首相官邸 新型コロナワクチンについてより、岩井コスモ証券要約)

以上より、想定より大幅に接種スピードが加速したことで供給がひっ迫してしまい、早く接種したいという「思い」との「ずれ」が出てしまったと見ています。

供給スピードにボトルネックがあることから接種スピードは落ちる可能性があります。しかし、人口の6~7割の人がワクチン接種を完了とするのが9~10月頃というのは現実的な目標だと見ています。そのため、世論や感染者数の動向にもよりますが、Go To キャンペーンの再開も9~10月頃と予想されます。

デルタ株など変異株の影響で不安感が増していることから、現在Go Toキャンペーン関連株は低迷していますが、仕込むタイミングとしては悪くはないと考えています。

Go To関連銘柄、注目は?

Go Toトラベル関連銘柄としては、ワクチンの接種が進めば人の移動が活発化することが想定されることから陸運業、空運業が期待できます。旅行の活発化も想定されることからホテルや旅行関連にも注目が集まるでしょう。海外旅行もワクチンパスポートが7月26日から申請開始であることから、語学関連も動き出すのではないかと見ています。

Go Toイート関連銘柄としては、特に酒類を提供する飲食業に大きな恩恵があると見ています。その他、コロナ禍でも好調であった回転すし業界も見ておきたいところです。また、予約サイトを運営する企業にも恩恵があるでしょう。リクルートHDは、トラベル・イート共に予約サイトを運営していることから注目すべきだと考えます。

Go Toイベント関連銘柄では、イベントを主催する企業やコロナ禍によって地位を獲得したオンライン配信を担う企業。そして、ディズニーランド・シーで有名なオリエンタルランドのような、現地で楽しめるエンタテインメント施設を運営する企業などに恩恵がありそうです。オンライン配信については、イベントの開催制限が緩和されていく際にも利用が続くのかどうかには、注視が必要ではないかと見ています。

Go To 商店街は予算規模自体が少ないため、特に注目すべき銘柄等はないと考えています。

<文:投資調査部 饗場大介>

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