本人だけでなく、みんなが知ることが大事!更年期障害

女性の健康問題として重要な更年期障害。保健師として、働く人の健康相談を受ける中でも、相談が多いものです。
更年期障害は約9割の女性に起こると言われており、すべての女性にとって重要な健康問題です。
症状を和らげるためには、本人のみならず、周りのサポートが重要になります。

更年期障害って何?

更年期障害とは、閉経の前後5年、計約10年間の間に起こる女性ホルモンバランスの崩れに伴う不快症状のことです。
更年期障害の原因は、卵巣から分泌されてきた女性ホルモンの分泌が減ってきたり、止まったりするためです。
女性ホルモンは、女性が生殖機能(妊娠したり、出産すること)を維持するために重要な役割を果たしますが、閉経(月経が止まること)に伴って分泌がほとんどなくなります。
更年期障害に多い症状は、ホットフラッシュ(顔が急に暑くなる)、発汗、動悸などの血管運動症状、イライラ、気持ちの落ち込みなどのメンタルヘルスの症状、また、腰痛、排尿障害、疲れやすさ等の身体的な症状が知られています。

どうして起こるの?

代表的な自律神経症状について説明します。
卵巣から分泌される女性ホルモンは、実は、脳の視床下部という部分からの指令を受けて分泌されます。
視床下部は体内のホルモン量を察知して、ホルモン分泌指示を調整しています。
更年期の体内ホルモン量の低下に伴い、視床下部はホルモン分泌を指示するのですが、もう卵巣には分泌する力が残っていません。
焦る視床下部はフル回転で指令を出し続けます。
視床下部はホルモン調節機能の他に「自律神経」も司っています。
ホルモン調節のためにパニック状態で働いた結果、自律神経も影響を受けて乱れてしまうのです。
自律神経というのは、人間の体内環境を整える中枢機関です。このように、ホルモン分泌変化の影響を受けた自律神経の乱れによって、全身に多種多様な症状が現れてしまうのです。

心理社会的な理由も関わってきます

身体に大きな変化を迎える50歳周辺の女性達。
社会的には、子ども達が巣立つ、親の介護、会社での責任のある役職等重責のかかる世代にもなります。
子育てが一段落する抜け殻のような気持ち、経済的な不安、先の見えない介護、それまで多忙にしてきた疲れが更年期障害による自律神経症状に重なり増幅させ、解決は一筋縄にはいきません。
また、個々人の考え方のクセや認知の歪みといった心理的な要因も症状を複雑にします。

「婦人科」に行ったら何をしてくれるの?

「更年期障害になったら婦人科へ」というのは聞いたことがあるけど、何となくこれ位の症状で病院に行くのもな……と我慢してしまう方が多いのが実情と思います。
サプリを飲んで凌いでいるという女性も多いのではないでしょうか。ですが、他の病気の可能性を除外するためにも、我慢せずに一度受診されるのをおすすめします。
更年期障害の訴えで婦人科に受診すると、まず医師の診察をもとに、必要があれば女性ホルモンとその他の病気を鑑別するための項目を血液検査で調べます。
その結果をもとに、適応となればHRTという女性ホルモン補充療法を受けることができます(治療を受けられない条件がありますので、医師と相談して決めてください)。
根本的な治療とも言えるHRTを受けても、十分な効果を得られないこともあるかもしれません。
その場合は、前述した心理社会的な要因が大きい可能性も考えられます。
原因を取り除くことは難しいかもしれませんが、症状に合ったお薬を利用したり、カウンセリングを受ける、リラクゼーションの実施等取り組んでみましょう。
また、漢方治療がうまくいく方や、年齢によってはピルが適用になる方もおられます。

会社で更年期障害の同僚がいたらどう接したらいい?

「あの人はお年頃だから」と腫れ物に触るように扱っていませんか?
ご本人の辛さはご本人にしかわかりません。
ただし、どのように辛いのか、どんな業務が辛いのか具体的にご本人に確認して継続的にサポートしてあげることが重要です。
ここで、本人には確認せずに決めつけて仕事を調整してしまうのはNGです。
この原則は、他の病気や育児中・介護中の方、どんな方にも当てはまります。
更年期障害は、前述したように大部分の女性が経験する一方、一時期のみの症状であり必ず乗り越えられます。
職場の支援など心理社会的要因も大きく影響するため、周りの人の関わりが症状を左右させると言えるでしょう。
更年期以降の人生を楽しむために、本人や周りの人が更年期障害を含め、からだ全体を見つめなおす機会と捉え、上手に対処しましょう。

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