ISSのモジュール「ピアース」分離、無人補給船とともに大気圏へ再突入

【▲ 無人補給船「プログレスMS-16」とともに国際宇宙ステーションを離れるドッキング室「ピアース」(Credit: Oleg Novitskiy, Roscosmos)】

日本時間2021年7月26日19時55分33秒、国際宇宙ステーション(ISS)のロシア区画からドッキング室「ピアース(Pirs)」が切り離されました。ISSを離れたピアースは約4時間後の同日23時42分に大気圏へ再突入し、20年に渡る運用を終えています。

今回ピアースがISSから分離・廃棄されたのは、2021年7月21日に打ち上げられた多目的実験モジュール「ナウカ(Nauka)」にドッキングポートを譲るためです。ピアースの分離はもともと7月23日に予定されていましたが、打ち上げ後にナウカの状況を確認する時間を確保する必要があるとして、最終的に26日まで延期されていました。

▲国際宇宙ステーションを離れるピアースとプログレスMS-16(動画)▲
(Credit: Roscosmos)

ロシア区画の大型モジュールとは異なり自力で飛行する機能を持たないピアースの分離と大気圏再突入には、最後にピアースへドッキングしていた無人補給船「プログレスMS-16」が用いられました。ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスによると、ピアースとプログレスMS-16の燃え残った部分はニュージーランドのウェリントンから約3600km、チリのサンティアゴから約5800km離れた南太平洋上に落下したと予想されています。

【▲ ISSを離れていくピアースとプログレスMS-16(奥)。右手前に見えるのは有人宇宙船「ソユーズMS-18 “ユーリ・ガガーリン”」(Credit: Oleg Novitskiy, Roscosmos)】

2001年9月に特別仕様の無人補給船「プログレスM-SO1」を使ってISSロシア区画のサービスモジュール「ズヴェズダ(Zvezda)」の下部(天底側)にドッキングしたピアースは、ロシアの宇宙服を使用した船外活動を行う際のエアロックとして、また有人宇宙船「ソユーズ」およびプログレス補給船のドッキングポートとして使われてきました。

なお、これまでピアースが担ってきたソユーズやプログレスのドッキングポートとしての役割は、ピアースと同様に2つのドッキング機構を持つナウカが引き継ぎます。また、エアロックとしての役割は、すでにズヴェズダの上部(天頂側)に結合している小型研究モジュール2「ポイスク(Poisk)」が2020年11月から引き継いでいます

また、日本時間7月29日22時24分には、ピアースにかわってISSのロシア区画に追加されるナウカのドッキングが予定されています。

遠ざかるピアースとプログレスMS-16(Credit: Oleg Novitskiy, Roscosmos)

関連:ISS新モジュール「ナウカ」打ち上げ成功、ISSには7月29日夜にドッキングの予定

Image Credit: Roscosmos
Source: Roscosmos
文/松村武宏

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