「外出と外食が減っているのに貯金ゼロ」30代4人家族の破綻寸前の家計は再生なるか?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、2人の子どもと公務員の夫をもつ33歳パートの女性。コロナ禍で外食や外出が減っているのに、貯金がまったくできないという相談者。家計の内訳を見てFPが指摘する問題点とは? FPの秋山芳生氏がお答えします。

コロナで外出、外食が減っているのに一向に貯金が出来ません。支出は少ないと思っているのに、給料が残らないのはなぜでしょうか。上手な貯金の方法が分からず、家計の計算も苦手です。コツを教えてください。

【相談者プロフィール】

・女性、33歳、パート、既婚

・同居家族について:夫/33歳、公務員月収25万円、妻/パート平均月収7万円

子ども2人(4歳、6歳)

・住居の形態:賃貸(愛知県)

・毎月の世帯の手取り金額:32万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:130万円

・毎月の世帯の支出の目安:25万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万円

・食費:5万円

・水道光熱費:2万3,000円

・教育費:3万円

・保険料:4万5,000円

・通信費:2万円

・お小遣い:2万円

・その他:10万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:0円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):0円

・現在の投資総額:0円

・現在の負債総額:不明(記載なし)


秋山:ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。コロナ禍で外出が減ったにもかかわらず支出が減らず、貯蓄が“まったく貯まらない”のですね。「贅沢しているわけではないのに、なぜか貯金が貯まらない」という思いは、古来から議論されてきた人類の不思議の一つです。

33歳の夫婦でご主人は公務員、奥様はパートでそれぞれに収入があるにもかかわらず、資産が増えないのは、家計の状態に秘密がありそうです。問題を正しく捉え、家計改善していかないと貯蓄は増えないので一緒に謎解きをしていきたいと思います。

支出の目安と内訳が10万以上ずれている破綻寸前の家計

現実的に、「毎月の貯蓄額:0円」「現在の貯金総額:0円」「現在の投資総額:0円」「現在の負債総額:不明(記載なし)」という事はあまり考えられません。

状況として借金はないけれど、貯金は貯まっておらず、明確に申告できるほどの貯金がない状態で「すぐに使ってしまう可能性もあり、使えば貯蓄が0になる状態」と解釈していきます。ボーナスの130万円があっても貯蓄が増えないのであれば、毎月の支出は赤字で、ボーナスで補填している状態と考えます。

一方、月間の支出は25万円と頂いていますが、住居費、食費、水道光熱費などを足していくと1カ月の支出は35.8万円になるので10万円以上ずれていることになります。ファイナンシャルプランナーとして、ご相談者さまの家計状態を分析すると、破綻しかねない非常に危険な家計状況だと感じます。

問題点は大きく3つです。

【破綻寸前の家計の問題】
1)家計が把握できていないので何が正しいか分からない。課題も不明瞭。
2)ボーナスで毎月の赤字を補填している。もしボーナスが無くなると一気に負債が膨らむ可能性が高い。
3)突発的なライフイベントや支出に対応できない(友人の結婚式参加、事故、引越し、家電の買い替えなど)。

家計の把握が最重要課題

家計が把握出来ていないと思われるので、何が問題なのか、どの費目に使いすぎているのかも把握が出来ていないのだと思います。「贅沢をしているわけではないのに何故か貯まらない」この思いは、貯蓄ができない人に共通する感覚です。

まずは家計簿アプリを活用して自分の支出を把握する所からはじめましょう。すでに家計簿アプリを活用している場合、「支出の費目を仕分けする癖」をつけましょう。買い物をしても、「使途不明金」が多かったり、アマゾンで買ったものが全て「書籍」として仕分けされてしまったりしていたら、何にいくら使っているかわかりません。週に1回は家計簿を見直して、支出が正しい費目になっているか確認すると良いでしょう。費目ごとに目標予算を決めて、細かくコントロールする習慣を作れると良いですね。

ボーナスに依存しない家計状況になろう

毎月の家計が赤字で、ボーナスでなんとか補っている場合は、かなり危険と言えます。

ボーナスは、支払いが保証されているわけではありません。公務員ということで、会社員に比べると市況の影響を受けづらいとは思いますが、「コストカット」が必要になった場合は真っ先に減額されます。ボーナスで穴埋めするのではなく、毎月の収支が最低でも黒字になるようにコントロールしながら、ボーナスは「出たらラッキー」という感覚で貯蓄に回すと良いと思います。

家計改善は固定費の削減から

家計の支出は、使ったら使った分支出が増える「変動費」と、毎月支払うことが決まっている「固定費」に分けられます。

家計改善しようとすると、変動費である食費や交際費から節約をする人が多いですが、実は固定費の見直しのほうが有効です。保険や通信費などの固定費は、契約により毎月一定金額を支払うことを約束しているため、見直しが面倒な面もあります。しかし改善出来た場合、その後は努力をしなくても支出改善が続くので、継続的な効果が得られるのです。

特に、保険と通信費と住宅費は3大固定費に数えられます。住宅費7万円は、32万の手取り収入から考えると21%程度なので多すぎるということはないでしょう。

通信費の2万円は、仮に7,000円の携帯を2台と、6,000円のインターネット回線と内訳を考えた場合、格安SIMや格安スマホに変えることで1台3,000円以下にできるなど、大きく支出を抑えられるでしょう。

保険の見直しは効果大

保険は4万5,000円と、かなりの高額です。お子さんがいるので、ご主人が亡くなるなどの万が一に備えて掛け捨ての死亡保険は必要だと思いますが、それ以外の保険は不要な場合が多いでしょう。

ご相談者様の場合、医療保険、終身保険、年金保険などに加入しすぎていて収支のバランスを壊してしまっていると思われます。公務員の方で、自衛官などの特殊な仕事の場合、「共助だから保険に入るように」と勧められる場合があります。ただ、本当に必要な保険かどうかで判断していかないと、家庭や家計が守れなくなりますので「要不要」で考えていきましょう。

保険は5,000円以内を目標に、多くても世帯で1万円を超えないように考えると良いと思います。特に、終身保険や年金保険など貯蓄性の保険に入っている場合は、途中解約すると元本割れすることがあります。現状、貯蓄がまったくなく、何か入用になった場合には「借金」をしなければならない窮地です。一旦保険は解約して返戻金を受け取り、現金を確保するとともに、毎月の保険料の引き落としを止めましょう。

投資は「生活防衛費」を作ってから

固定費の見直しで、恐らく月に4万円は支出を減らせると思います。資産形成を考えると、この4万円を投資に回したくなりますが、まずは「月の生活費の6カ月分」を目安に貯金し、「生活防衛費」を作りましょう。

生活防衛費は、万が一働けなくなった場合でも、焦らずに次のステップに進めるように生活を守るための貯蓄です。最低生活費の3カ月分を目安に、できれば生活費6〜12カ月分があると安心だと思います。生活防衛費が貯まったら、余剰資金をつみたてNISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用して老後に向けた資産形成をすると良いと思います。

家計改善で人生設計が変わる

家計把握や家計改善は、その方法を知っていてもやらなければ意味がありません。やらなければ知らないのと同じなので、実行することが重要です。

ご相談者さまの場合は、まず家計簿をつけて、何に使いすぎているかを知ることが大切です。そして、固定費を見直すことで、月の収支は大きく改善していくと思います。また、ボーナスもすべて使っている様子なので、年間の支出計画をしっかりと立てると良いでしょう。

今後のお子さんの学資であったり、ご自身の老後であったり、大きな支出が考えられると思いますので計画的に準備していくことが大切です。

素敵な未来を築くために、どこか参考になれば幸いです。

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