ブライダル業界の回復はいつ?新型コロナ直撃の現状と今後の見通しを解説

ブライダル業界は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた業界の一つです。昨年度は、新型コロナウイルス感染拡大の影響から結婚式の延期が相次ぎました。マスメディアではキャンセルという言葉が出ていますが、キャンセル率は低く、大半が延期となったようです。

今回は、ブライダル業界の現状と今後の見通しについて解説します。


2020年度は全上場ブライダル会社が純損失を計上

一般にブライダル運営会社は、受注産業で、受注して結婚式を施行して初めて売上高を計上します。このため、結婚式の延期により、売上高が計上できず、上場結婚式場運営会社の2020年度決算は全社が純損失を計上となりました。

現在は、結婚式の延期が相次いだこともあり、ブライダル企業の大半は、受注残件数が増加しています。地方の中核都市にブライダル施設を展開しているアイ・ケイ・ケイは、過去最高であった結婚式の年間施行件数を大幅に上回る受注残件数を抱えています。

2021年4月に発令された緊急事態宣言ではブライダル業界は休業要請対象外となっており、人数を絞り、アルコール、カラオケはなしという状態で結婚式を施行しているのが現状です。

また、昨年は挙式の延期を選択するカップルが大半でしたが、今年は規模を縮小して挙式を行うケースが多いのが特色です。もうこれ以上延期は出来ないと判断したものと推測しています。この状態だと、2021年度前半のブライダル各社は売上高を計上できますが、単価下落が2割程度となり、利益面の苦戦は余儀なくされるでしょう。

回復はいつ?ブライダル業界今後の見通し

ワクチン接種率が一定の水準まで高まるとみられる2021年秋以降は、ブライダルの宴会人数を絞らず、当初予定通りの人数で結婚式を施行していくとみられます。この状態で初めてブライダル各社は利益が回復するとみています。来年以降の受注内容は、おおむね平年通りの結婚式参列者数で受注できている模様です。

「Reopening+α」として期待しているのは、政府が6月に発表した「経済財政運営と改革の基本方針2021年」に“結婚式支援”という言葉が掲載されたことです。従来は“子育て支援”でしたから、より一層踏み込んだものとなるとみられます。

予想される支援としては(1)「結婚新生活支援事業」(最大60万円の補助)の拡充です。これは、すでに539の自治体で実施していますが、認知度が低く、自治体によっては実施していないところがあります。結婚式場がカップルから依頼されて、申請するというスキームとなるとみられます。

また、(2)結婚式を挙げるカップルに対して結婚式支援金の支給も注目です。年間52万組の婚姻数のうち、3分の1程度が結婚式を挙げていません。結婚式を挙げない理由の1つには経済的な問題があります。上記2つの支援案は、この秋にも提出されるとみられる補正予算に組み込まれる可能性があります。

こうした中で注目される企業としては、ゲストハウス型結婚式場を全国に展開し、ブライダル企業のトップ企業であるテイクアウンドギヴ・ニーズ、地方の中核都市を中心にブライダル施設を展開しているアイ・ケイ・ケイ、結婚相談所の直営店及び全国の結婚相談所ネットワーク(日本結婚相談所連盟)の運営を行っているIBJに注目しています。

<文:企業調査部 鮫島誠一郎>

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