「除名」とは一体なんだろう?~本当にすぐわかる政治用語~

政治にちょっと関心があるけど、ちゃんと調べるほどには興味ない!

そんなあなたに選挙ドットコム素人代表ひがし(@misuzu_higashi)が政治や選挙にまつわる専門用語を簡単解説するコーナー、第5回は「除名」です。

都議選開票後に話題になった「除名」という制度について、わかりやすく説明します。

ずばり、除名とはなんだろう?

政党に属していた議員が「除名」されることがありますよね。

「除名」とは、政治家が不祥事を起こしたり、政党内で問題を起こしたりした際に、政党が下す処分のうち、最も重いものです。各党の党則や規約によって手続きが定められています。

会社で言えば、懲戒処分(免職、降格、停職、減給、戒告、訓告、厳重注意など)の中で最も重い「懲戒解雇」に近いものと言えるでしょう。

除名された政治家は、その政党の所属ではなくなります。一部例外はあるものの、原則として復党が認められることもありません。

政治家の意思で党を離れる場合は「離党届」を出すこともあります。会社で言えば「退職願」ですね。「離党届」が受理されて円満に党を辞めるケースに対して、「除名」は政治家の意思に関係なく、強制的に党を辞めさせるというものです。

※政党によっては「除名」ではなく「除籍」という場合もあります。

政党は除名しかできないの?

最近話題になった「除名」は都民ファーストの会と木下富美子氏の事例です。

7月4日の都議選で当選した木下富美子氏が、都議選の直前に乗用車の無免許運転で事故を起こしていたことが発覚しました。都民ファーストの会は、無免許状態での運転は明確な法律違反であることや、会の本部や選挙対策本部には事故発生時の連絡が一切なく、報道が出た7月5日になって初めて党へ報告されたことなどから、規約上最も重い「除名処分」とすることを決定しています。

この「除名」という処分が発表された際に、SNS上では「なぜ辞職させないのか」といった疑問の声が散見されましたが、実は政党にできることは除名までなのです

どんなに悪いことをしても、政党が勝手に政治家を辞職させることはできません。選挙で選ばれた議員の身分には、一定の保証があるからです。

都民ファーストの会の荒木千陽代表は、騒動のあと、木下氏に議員辞職を求める考えを報道陣に訴えました。

しかし木下氏はこれには応じる様子はなく、一人会派「SDGs東京」として都議会議員を続けています(2021年7月23日時点)。

過去に「除名」された事例

2000年代の「除名」で有名なのは、2005年の「郵政解散」に関連するものです。

小泉純一郎総理(当時)は郵政民営化の法案成立を目指していましたが、自民党の中でも郵政民営化に反対していた人たちがいました。小泉総理は郵政民営化が否決されたので衆議院を解散(郵政解散)し、総選挙を行うことに。

反対した人たちは「党議拘束に造反した」として自民党の公認を得ることができず、自民党以外の政党に参加した議員は自民党から除名されました。

その他の事例だと、党規律違反により共産党から市川正一氏が(2000年)、党批判により公明党から福本潤一氏が(2007年)、不適切発言により日本維新の会から丸山穂高氏が(2019年)、緊急事態宣言中に風俗店を利用したことにより立憲民主党から高井崇志氏(2020年)等の議員が除名されています。

議会が「辞職勧告決議」を出す場合も

政党は除名しかできませんが、議会として「辞職勧告決議」を出すこともあります。

7月23日、東京都議会は新しい都議の任期が始まるのに合わせて臨時会本会議を開きました。そこで、木下議員への辞職勧告決議を全会一致で可決しています。ただ、この決議には法的拘束力がなく、強制的に議員を辞職させることはできません。

まとめ:政党ができる最大の懲罰が「除名」である

「除名」とは、政党が所属する議員等に対してできる最大の懲罰行為です

除名された議員等は政党への所属資格を剥奪されてしまいます。

しかし、除名されたら議員辞職をしなければならないというわけではありません。

政党に議員を辞職させる権限はなく、除名された議員は無所属のまま活動を続けたり、他の政党に移籍したりすることが可能です。

一度当選した議員をやめさせるのは、現行憲法下では非常に難しいのです。

投票の前には「その人が本当に議会にふさわしい人なのか」も考えてみたいですね。

© 選挙ドットコム株式会社