過酷な状況にも、パンを分け合って生きる難民たち 「ジュゼップ 戦場の画家」本編映像

8月13日より劇場公開される、実在の画家ジュゼップ・バルトリを描いたアニメーション映画「ジュゼップ 戦場の画家」から、本編映像が公開された。

公開された本編映像は、雨の降る収容所に性悪な憲兵が配給のパンを投げ捨てるシーンから始まる。難民たちがパンをめぐって争うことを期待した憲兵だったが、難民が取り出したナイフは傷つけ合うためではなく、パンを分け合うために使われる。かつて憲兵としてその様子を見ていたセルジュは、「どっちが獣だ。自問を続けた」と孫にそのことを語る。そして場面は切り替わり、難民たちが建築する姿をスケッチするジュゼップが映し出される。さらに、ジュゼップのスケッチによって、苦しい状況でも生きていくために住む場所を作り上げる難民たちの力強さが描き出される。

あわせて、本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。女優の吉岡里帆は、「白があるから黒があり、黒があるから白がある。 色と色の補完は美しく、その輪郭に触れずして生きていく事は不可能だ。 ジュゼップの感じた食料と自由と生への飢えは、現代を生きる私達に何を託したのか。 残された絵を辿る時間は皮肉にも生きる希望へと昇華されていく」と、ジュゼップの力強いスケッチについてコメント。NPO法人Dialogue for People副代表でフォトジャーナリストの安田菜津紀氏は、「色彩を取り戻していくその軌跡は、私たちが生きる『今』と地続きだ」とコメントを寄せている。

「ジュゼップ 戦場の画家」は、収容所の過酷な状況の中で、ジュゼップとフランス人憲兵との間に芽生えた有刺鉄線を越えた友情や、愛する人との再会を胸にどんな現実も描くことで戦い続けるジュゼップの姿を描いたアニメーション映画。メガホンを取ったのは、本作が長編アニメーション監督デビューとなるオーレル。ジュゼップが収容所で記した実際のスケッチに触発され、10年の歳月を費やして完成させた。完成した作品は、セザール賞で長編アニメーション賞を受賞。日本では、第8回東京アニメアワードフェスティバルで、長編コンペティション部門グランプリ獲得した。

【コメント】 ※順不同、敬称略

■吉岡里帆(女優)
白があるから黒があり、黒があるから白がある。
色と色の補完は美しく、その輪郭に触れずして生きていく事は不可能だ。
ジュゼップの感じた食料と自由と生への飢えは、現代を生きる私達に何を託したのか。
残された絵を辿る時間は皮肉にも生きる希望へと昇華されていく。

■木村草太(憲法学者)
自分らしく生きるのが困難な時代。
それでもなお、個人の尊厳を保ち続けるために、何が必要なのか。
時代に流されずに、責任ある行動をとるには、どうしたらいいのか。
自尊心はどこから生まれるのか。
そんなことをじっと考えたい。

■安田菜津紀(NPO法人Dialogue for People副代表/フォトジャーナリスト)
折り重なり、絡み合う暴力の連鎖は、彼の日々をモノクロに変えた。
色彩を取り戻していくその軌跡は、私たちが生きる「今」と地続きだ。

■武田一義(漫画家)
難民となり強制収容所で絵を描き続けたジュゼップ。
飢え、傷病、暴力、過酷な生活のなか、新米憲兵セルジュと密かに育んだ友情の爽やかさ。
重い物語だけど後味はとても良い。実話ベースの上質なフランスアニメ映画。(Twitterより)

■中川敬(ミュージシャン/ソウル・フラワー・ユニオン)
絵を描くことで生き延びたジュゼップの魂の深淵に、監督オーレルの大胆な画風が光を当てる。
尊厳が時空を超えて現在に降着する、ラストの展開に感泣。

■今祥枝(ライター・編集者)
芸術性と社会派メッセージの融合は、アニメーションならではの優れたバランスに意義がある。
過酷で残酷な現実から目をそらさず、問題と向き合う気持ちの余裕を観る側に与えてくれるはずだから。
『戦場でワルツを』を思わせる社会派アニメーション映画の秀作だ。

■大西健丞(特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン代表理事)
難民は二度魂を奪われる。
逐われた国とたどりついた国で。

動乱の世紀に過酷な難民だったアーティストの物語。
マーク・ロスコに認められたカタロニア人。
現代アートを愛する若者にみてほしい。
命からがら逃げてきた人たちの魂を奪う場所は
日本にもまだ存在する。

【作品情報】
ジュゼップ 戦場の画家
2021年8月13日(金) 、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
配給:ロングライド
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