<社説>振興と安保のリンク 自立を阻むのは誰か

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 沖縄の自立的経済発展を阻んでいるのは誰か。防衛を含む安全保障と沖縄振興を関連付け(リンク)るような発想は到底認められない。 自民党の沖縄振興調査会(小渕優子会長)は来年で施政権返還(日本復帰)50年を迎える沖縄の新たな振興計画について提言案をまとめた。

 提言案は、中国の台頭と地政学的な背景を踏まえ、沖縄の発展は「我が国全体の安全保障環境の安定を意味する」と明記。離島振興の項目に「尖閣諸島」の文言を盛り込むなど、沖縄振興と安全保障の関連を印象付けている。

 沖縄振興は、あくまで沖縄県の自主性を尊重するものでなければならない。カネ(振興策)と引き換えに基地(安全保障政策)を受け入れよという構図は断固拒否する。

 沖縄振興の根拠となる沖縄振興特別措置法には「沖縄の置かれた特殊な諸事情に鑑み」とある。「特殊事情」とは戦後27年間、日本の独立と引き換えに米国施政権下に置かれた歴史的事情、広大な海域に多数の離島が点在する地理的事情などを指す。

 自民党提言案は、沖縄の「地政学的」な重要性を強調する。「我が国全体の安全保障環境」とアジア・太平洋地域の「安定」という観点で沖縄振興を捉え、「離島の条件不利性の解消」や「広大な基地による土地利用等の制約への対応」に取り組むと説明している。

 従来の沖縄振興の理念を骨抜きにし、安全保障と沖縄振興をリンクさせている。名護市辺野古の新基地建設、米軍の中距離ミサイル配備、先島諸島への自衛隊配備などと引き換えでなければ、沖縄の振興は認めないという発想につながりかねない。

 沖縄が米国施政権下にあった27年間、核兵器を配備する在沖米軍基地の存在によって日本の安全が保障されてきた。来年、沖縄返還から50年を迎える。さらに日本の安全を沖縄に一方的に負担させるのか。日本の安全保障を言うなら、国民が等しく引き受けなければならないはずだ。

 菅義偉首相は官房長官時代(17年)、現行の第5次沖縄振興計画(沖縄21世紀ビジョン)終了後の長期的な沖縄振興について、基地政策への協力が条件であるとの認識を表明している。菅氏が総裁を務める自民党の沖縄振興調査会の提案は、菅氏の認識と軌を一にしているのだろう。

 橋本龍太郎元首相はかつて、普天間飛行場と振興策のリンクを問う記者団に「(そんな質問は)悲しい」と答えている。現在の自民党は、沖縄の歴史を理解しようとしない。

 県は22年度からの新たな沖縄振興計画素案で、沖縄振興の根拠として日本経済発展への貢献を強調している。しかし、今回の自民党提案のように安全保障とリンクした形の「貢献」として逆手に取られかねない。「貢献」を持ち出すことで、本来の沖縄振興の趣旨がゆがめられかねないことを自覚してもらいたい。