2020年「電力事業者」の新設法人調査

 2020年(1-12月)に新しく設立された法人 (以下、新設法人)13万1,238社(前年比0.1%減)のうち、電力事業者は1,145社(同20.5%減)で、2018年から3年連続で前年を下回った。
 ピークの2014年(3,285社)からおおよそ3分の1(65.1%減)で、電力事業者の新設ブームは終焉を迎えているようだ。新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令された5月は、前年同月比53.7%減で急ブレーキがかかり、電力事業者の新設数は下降線をたどっている。
 利用エネルギー別では、「太陽光」と「ソーラー」の新設法人が675社で最多だったが、前年から2割以上(前年比21.2%減)減少した。このほか、「風力」(152社、前年比5.5%減)、「バイオマスエネルギー」(69社、同2.8%減)など、注目を集めた再生可能エネルギーも過渡期を迎えている。
 引き続き、脱炭素社会に向けた電力への期待値は高いが、市場の変化後は事業者の淘汰が目立ち、電力事業者の新設ブームは収束が鮮明になってきた。

  • ※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象400万社)から、2020年に新しく設立された法人データのうち、日本標準産業分類に基づく中分類から「電気業」を抽出し、分析した。
新設電力

利用エネルギー別 「太陽光」が前年比21.2%減

 2020年に新設された電力事業者1,145社の主な利用エネルギーは、「太陽光」と「ソーラー」が最も多く675社(前年比21.2%減)で、全体の約6割(58.9%)を占めた。
 次いで、「風力」が152社(同5.5%減)、「バイオマスエネルギー」が69社(同2.8%減)だった。FITで買取価格が安定している「地熱」(40社、前年比33.3%増)などを除き、各エネルギーで減少が目立った。

資本金別 1千万円未満が9割超

 資本金別は、「1百万円未満」が559社(構成比48.8%)と約半数を占めた。このほか、「1百万円以上5百万円未満」が420社(同36.6%)、「5百万円以上1千万円未満」が69社(同6.0%)で1千万円未満(その他を除く)が9割(構成比91.5%)を超えた。

法人格別 「合同会社」が6割

 法人格別では、最多が「合同会社」で730社(前年比20.3%減、構成比63.7%)だった。次いで、「株式会社」が390社(同20.4%減、同34.0%)、「一般社団法人」が19社(同34.4%減、同1.6%)。
 エネルギー関連事業者が、設立コストが安価で手間や維持が容易な合同会社を複数設立するケースが多く、「合同会社」が全体の約6割を占めた。こうした合同会社は、資本金が1千万円未満の小規模が大半を占める。

 2012年のFIT制度の導入に伴い、再生可能エネルギーを用いた電力事業への参入が急増し、ピークの2014年には3,285社が新たに設立された。だが、その後の買取価格の下落や参入条件の厳格化で、「太陽光」を中心に新設社数は減少をたどっている。
 また、電力事業への安易な参入が増えたことで、太陽光関連事業者の倒産が増加し、2017年は87件に達した。資金面や事業計画が不十分な参入で、競争力の低い事業者の淘汰が進んでいる。こうした状況を背景に、電力市場への入退出はピークアウトを迎えているようだ。
 ただ、日本のエネルギー事業は大きな転換期にある。2021年7月、経産省はエネルギー政策の指針となる新たな「エネルギー基本計画」の素案を公表した。2030年度には電源構成のうち、再生可能エネルギーの比率を36~38%に大きく引き上げ、水素等の利用拡大を促している。
 一方、主力のLNG、石炭は約20%にとどめる目標を掲げ、温室効果ガスの排出量を2013年度比で46%削減につなげると示した。
 再生可能エネルギーの主力電源化には、市場の活性化がカギとなる。需要に応える供給体制が未整備のまま舞い上がった再エネブームが過ぎ去り、今後は精緻で長期的な見通しを持った事業者の参入を促す仕組みが求められる。

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