「字あまりではなく言葉がグルーブしている」よしだたくろう「イメージの詩」は日本語ロックの金字塔

イメージの詩/よしだたくろのEPシングルと松崎真人

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シンガーソングライターの松崎真人が、'70~'90年代の日本の曲・日本語の曲を中心に"厳選かけ流し"(イントロからアウトロまでノーカット)でお届けするSTVラジオの夏の特別プログラム『ナイタースペシャル MUSIC☆J』。「日本語ロックの8人」を通しの特集テーマとして、日本のロック界に大きな影響を与えたり、変革をもたらしたアーティストを連日、特集しています。7月28日(水)は吉田拓郎「ボブ・ディランと筒美京平の共存」がテーマ。(文中敬称略)

M21「明日に向って走れ/よしだたくろう」
M22「人生を語らず/よしだたくろう」

松崎:吉田拓郎とボブ・ディランと言えば、先行していた人としてフォークの神様と言われた岡林信康がいますけど、恐らく拓郎はその上の世代を見ていて「こうなったら危ない」というバランス感覚を持っていたんじゃないかという思いがします。つまり、過度にカリスマ化されず、自分の立ち位置を常に自由にしておいて、そう簡単に自分を既成概念で縛り付けない術を知ってるような気がします。

松崎:ラジオでも常に(拓郎は)「自分のことを放っておいて欲しい」とか「自由にさせて欲しい」とか「ファンに感謝していないわけじゃないけれど、構って欲しくない」みたいなことを堂々と言う方で、「歌いたくないときは歌わない」とかそういったことを自分で獲得することで、潰れることを旨く避けて、この厳しい音楽界でサバイブして(生き残って)きたんじゃないかと思います。あくなき自由を求める精神は、いまの拓郎さんにもあるんじゃないかなと思います。

松崎:アイドルに曲を書くのも当時は「商業主義に走った」とか色んなコトを言われたものですが、昔はファンも"うるさ方"が多かったですから。でも、次々と結果を出すので、みんな黙ってしまうと言うわけです。あまたある提供曲の中で、(浅野美代子の)「赤い風船」もなんなので、キャンディーズにしました。

M23「アン・ドゥ・トロワ/キャンディーズ」

松崎:のちに自身がカバーして、最後の一節に「さよなら~キャンディーズ」と入れたわけですよね。そういう茶目っ気というか、拓郎はいつもどこか、そういうチャーミングなところがる人なんですよね。

松崎:拓郎がすごいのは、フォーライフを創った当初の勢いがだんだん衰えることになって、変わって行くわけですが、まず30歳になるときに「ローリング・サーティ」という2枚組のアルバムを出して、ここでは松本隆と組むことで、自分に喝を入れます。そんな形で、いま自分(松崎)を含めて「30歳になっても40歳になっても50歳になってもロックをやっていんだ」ということを日本人で初めて身を以て示してくれたのが拓郎ですよね。小田(和正)も世代的には近いけれど、やはり拓郎こそが長く歌い続ける、ロックであり続ける、吉田拓郎であり続ける。そして懐メロにならない、いつも生々しいところが拓郎のスゴいところだなと思います。

松崎:「拓郎はこんな風に40代を回顧してるんだな」と思った曲があります。拓郎に詳しい人ほど「ふむ、ふむ」と思う歌詞になっています。

M24「大阪行きは何番ホーム/吉田拓郎」

松崎:拓郎はよく「字余り、字余り」と昔は言われたんですが、いま聴くとちゃんとビートには乗ってるんだよね。昔の歌謡曲に比べれば確かにたくさんの言葉が詰まってるんだけれども、オン・ビートであることが違うんですよね。しかも、そのビートがバックの演奏、それがギター1本であっても、ロックバンドの編成であっても、絶妙にグルーブしてるんですよね。なので、字が余ってるのではなく、言葉がグルーブしているんだと、私は思っています。

松崎:そう言う意味では、超初期の作品ですが、日本語のポップスの金字塔だと思います。

M25「イメージの詩/よしだたくろう」

松崎:初期には長い歌がたくさんあって、連想ゲームみたいにように歌詞が浮かんできて浮かんできてしょうがない時期だっと思います。そうじゃない時は、無理して自分で書かないというのも拓郎の上手いところで、ナイスなコンビとして、岡本おさみとか松本隆とかをパートナーにしながら、長いキャリアを歩いてきたんだと思います。

M26「今日までそして明日から/よしだたくろう」

<松崎真人の編集後記>
「イメージの詩/よしだたくろう」日本語詞で背中に電気が走るような体験をしたのは、この歌と、佐野元春の「アンジェリーナ」と、ブルーハーツの「人にやさしく」。イメージの詩はまさに自由連想法で一気に書き上げたような風情がある。これだけ長い歌なのに、冗長なところがなく、ハッとさせられる体験の連続のうちに6分半が過ぎていく。手法も、内容も、表現も。日本語ポップスの金字塔。(松崎真人)

<7月28日のプレイリスト>
M01「悪女/中島みゆき」
M02「バッド・ガール/佐野元春」
M03「水色のワゴン/Hi-Fi-SET」
M04「Just Fit/井上陽水」
M05「八月の匂い/鈴木茂」
M06「瞳そらさないで/DEEN」
M07「眠れない隣人/安全地帯」
M08「レモンティー/SHEENA & THE ROKKETS」
M09「サマータイムグラフィティ/TOM★CAT」
M10「燃えろいい女/ツイスト」

M11「ビューティフル・エネルギー/甲斐バンド」
M12「マイアミ午前5時/松田聖子」
M13「終わらないSun Set/吉川晃司」
M14「歌さえあれば/センチメンタル・シティ・ロマンス」
M15「いまのキミはピカピカに光って/斉藤哲夫」
M16「ワールド・ボーイ/寺内タケシとバニーズ」
M17「廃虚の鳩/ザ・タイガース」
M18「エンドレスサマーヌード/真心ブラザーズ」
M19「雨が空から降れば/小室等」
M20「風になりたい/川村ゆうこ」

M21「明日に向って走れ/よしだたくろう」
M22「人生を語らず/よしだたくろう」
M23「アン・ドゥ・トロワ/キャンディーズ」
M24「大阪行きは何番ホーム/吉田拓郎」
M25「イメージの詩/よしだたくろう」
M26「今日までそして明日から/よしだたくろう」

29日の特集は「湯川れい子~"女性"と"母性"をロックに乗せた先行者」

湯川れい子作品を手に…この曲も!

29日(木)は、湯川れい子の特集。「女性」と「母性」をロックに乗せた先行者、と題して、作詞家としての湯川れい子が、日本語のロックにもたらした数々の変革を、彼女の作品を通して辿ります。

松本伊代/センチメンタル・ジャーニーの「♪伊代はまだ、16だから~」の詞に度肝を抜かれた人も多いと思います。なぜ湯川れい子がそんな詞を編み出すことが出来るのか…松崎真人が紐解きます。

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STVラジオ『ナイタースペシャル MUSIC☆J ~日本語ロックの8人~』(7月27・28・29・30日、8月3・4・5・6日 各17:55~20:50)※RCCラジオ同時ネット__

ナイタースペシャル MUSIC☆J

放送局:STVラジオ 他1局ネット

放送日時:毎週火曜~金曜 17時55分~20時50分
※放送局によって日時が異なる場合があります。

出演者:松崎真人(シンガーソングライター/北海道出身)

番組ホームページ

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