クイーンのブライアン・メイが語る“Too Much Love Will Kill You”「今まで書いた中で、ある意味最も重要な曲」

Photo by Richard Gray © Duck Productions Ltd.

2021年8月6日(国内盤CD発売は8月11日)にリマスターや貴重な音源が追加されて発売されるブライアン・メイ初のソロ・アルバム『Back To The Light(邦題:バック・トゥ・ザ・ライト~光にむかって~)』から「Too Much Love Will Kill You」の音源とミュージック・ビデオが公開となった。

この曲は1992年8月にブライアンのソロ・シングルとして発売され、ソロ・アルバムにも収録。1995年にはクイーン・ヴァージョンとしてフレディが歌うものが『Made in Heaven』に収められた。

<動画:Brian May – Too Much Love Will Kill You (Official Music Video Remastered)>

ブライアン・メイが1992年に発売したソロ・アルバム『Back To The Light』の中で、特に傑出している「Too Much Love Will Kill You」は、繊細なヴォーカル、穏やかなキーボード、控えめなアコースティック・ギター・ソロ、そして耳に残るメロディが印象的な曲だ。ブライアンはこの曲について「今までに書いた中で、ある意味、最も重要な曲」と語っている。

当時のシングル ©Duck-Productions-Ltd

 

フレディ追悼コンサートでの演奏

1992年8月24日にシングルとして発売されたこの曲は、全英チャートで5位を記録。ブライアンのソロでのヒット曲となった。リリースに先立ち、同年4月にウェンブリー・スタジアムで開催された〈フレディ・マーキュリー追悼コンサート〉では、72,000人のファンの前でブライアンがこの曲を披露。明らかに感極まった様子ながら、一音も外すことなく完璧に歌い上げたブライアンは、恐らくこの曲の由来について広まっていた誤解を確実に解いたと言って良いだろう。

ステージ上でこの曲を紹介する際、ブライアンは「言い訳させてもらえるなら、僕がこの曲を歌うのは単に、僕が皆さんにお聴かせ出来る中で最も出来の良いものだからです」と語った。

楽曲の誕生と悲痛な歌詞

彼がこれを歌った理由は、しばしば考えられていたように1991年にこの世を去ったクイーンの伝説的ヴォーカリスト、フレディについて書かれた曲だからではない。この曲そのものの誕生は、1986年から87年にかけ、エリザベス・ラマーズとフランク・マスカーというソングライターの友人二人と共に、ブライアンが曲作りをしていた時期に遡る。ブライアンは、当時ロサンゼルスに滞在しており、私生活で激動とも言える変化を経験する中、「遥か故郷を離れて、胸のうちでは混乱したまま」何らかのはけ口を見出そうとしていたのだった。ブライアンは、こう説明する。

「“Too Much Love Will Kill You”にはとても長い物語があって、アルバム『Back To The Light』に収録されているヴァージョンがオリジナルで、曲を書いていた時に僕が弾いたオリジナルのキーボードが入っている。僕とフランク・マスカー、そして彼の当時の女友達と一緒に部屋にいたんだけれど、僕にとっては心理療法のセラピー・セッションのようなものでした。その頃の僕は追い詰められて身動きが取れないように感じていたから、こういった歌詞がただ湧き上がってきた。どうしても抜け出せないと思えるような場所に、僕ははまり込んでいたんです。そのことについて書くことだけしか、僕には出来なかった。そういう状況にあった恐らく9ヶ月から1年の間に、僕が書いた唯一の曲がこれでした」

そのような心境について曲を書くに当たり、ブライアンは全てを率直に吐き出した。“痛みに気がふれてしまいそうになる”と歌うブライアン。その歌詞は、彼の人生の一時期に由来しているが、独特の正直さにより、楽曲には普遍的な力が与えられている。それは間違いなく、ブライアン自身も、現在に至るまで長年の間、共感を覚え続けている歌詞だ。

「そこには今も、僕が向き合っている様々な悩みが描かれている。“Too Much Love Will Kill You”は、僕の心の一番深い所に実際に埋まっているものについて書いた年代記的な物語なんです。この曲の歌詞の一語一語は、今聴いても、どれも僕にとって全て大切な言葉。どの言葉にも、今もやはり共感出来る。正に僕の内面を表しているんです。『表している』と現在形を使ったのは、僕があの頃とそれほど変わっていないことに気付いたからです。僕の人生の中で、自分の経験や思いをそのまま伝えることが出来た唯一の機会ですね。今までに書いた中で、ある意味、これは最も重要な曲なんだ。僕の人生の旅路が要約されているからね」

この曲に血の通った力が備わっている理由は、ブライアンがアレンジを控えめにした点にも大きく起因している。個人的な苦悩と深い関わりのあるこの曲は、作り手の声に忠実であるべきだとブライアンは認識しており、そこに過度な装飾は加えなかった。

「僕の作ったヴァージョンは、原点に忠実なんです。原曲に込められた感情をそのまま伝えるもの以外の要素は何一つない。原曲には、ドラムが入るのをきっかけに壮大になっていくような瞬間がない。そこまではいかないんですよ。どこを取っても自信なさげで、とても繊細。そして僕の歌い方に表れている生々しい感情は、正に僕の気持ちそのものなんです。僕が書いた曲、僕の思いってことですね」

 フレディが歌うクイーン・ヴァージョン

尚かつブライアンは、リスナーも同じ気持ちを感じていると知り、それを理解していた。クイーン・ファンの多くは、この曲をフレディと結び付け、重く受け止めていた。一方、クイーン自身もまた、そのことを肝に銘じていた。より壮大な、フレディのヴォーカルを入れた別ヴァージョンは1989年にレコーディングされており、それは後年、フレディの死後に完成したクイーンのアルバム『Made In Heaven』(1995年発売)に収録されることとなる。

翌1996年にシングルとしてリリースされた同曲のクイーン・ヴァージョンは、優れた作曲家に送られる英国の賞、アイヴァー・ノヴェロ(最優秀作詞・作曲・楽曲賞)を受賞。ブライアンの心のこもった告白が、その起源を超越する独立した存在として発展するのに十分なだけの揺るぎない力を備えていることの証明となった。

「フレディと一緒にあのヴォーカルに取り組んだのは、とても楽しかった。この曲が何か違うものになっていくこと、何か違う意味を持ったことに僕らは気づいていた。僕らは皆、気づいていたんです。奇跡が起こらない限り、フレディの人生は恐らく限られたものになるだろうと言うまでもなく分かっていた。だからこそ、この曲が何か違うものに感じられるようになり始めたんです。それで僕らはためらうことなく、この曲をとても壮大な、とてもクイーンらしいものにした。僕も気に入ってますよ」

「だけど、もし、僕の人生の血と汗と涙が注ぎ込まれたこの曲のオリジナル版を聴きたいなら、それはこのヴァージョンです」

『Back To The Light』のボックス・セット、デラックス盤2枚組CD、及びデジタル・フォーマットで入手可能となるCDの2枚目『Out of The Light』には、「Too Much Love Will Kill You」のギター・ヴァージョンと、1993年4月6日にロサンゼルスの〈パレス・シアター〉で録音されたライヴ・ヴァージョンの2種類の別ヴァージョンが収録されている。

Written by uDiscover Team

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ブライアン・メイ『Back To The Light』
2021年8月6日発売
(国内盤CD発売は8月11日に変更)

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