<レスリング>【特集】オリンピック日本代表からもメッセージ、U23世界王者・中村倫也(専大卒=EX FIGHT)がKO勝ちでプロ・デビュー

 

(文=布施鋼治、写真提供=(C)SUSTAIN/SUSUMU NAGAO)

闘いの場をマットからオクタゴンに移した中村倫也。デビュー戦に臨んだ

 「オレのオリンピックが始まった!」

 レスリングの元世界選手権代表、U23世界王者の中村倫也(専大卒=EX FIGHT)が鮮烈なプロデビューを飾った。7月25日、東京・後楽園ホールで行なわれたプロフェッショナル修斗公式戦「SHOOTO VOL.5」。中村は論田愛空隆(心義館)とのバンタム級(61.2㎏以下)5分2ラウンド戦に挑み、2ラウンド0分20秒、左ハイキックで見事なKO勝ちをおさめた。

 論田はプロとして11戦5勝5敗1分けという戦績を持つキャリア7年目を迎えたベテラン。4年前には、試合開始わずか10秒で対戦相手をKOするなど、インパクトの強い試合をすることで定評のある選手だ。しかしながら中村の敵ではなかった。

 中村は開始からスタンドの打撃で攻め込み、テークダウンを奪うとバックからパンチを打ち下ろしていく。グラウンドで体勢を入れ換えられても、慌てず騒がず。さらに自ら回り込む形でトップポジションを奪い返す。

 結局、中村は1Rだけでも何度もテークダウンを奪った。ラウンド終了間際には裸絞めや腕ひしぎ十字固めを狙う場面も。

 迎えた2R、中村はローキックやジャブを散らした直後、左ハイキックを一閃。この一撃をダイレクトに受けた論田は思い切り前のめりにダウン。中村がパウンドを追撃したところで、レフェリーは試合を止めた。

世界最大の「UFC」出場を目指して、確実な第一歩を踏み出した

 試合後、インタビュースペースで感想を求められた中村は「ホッとしました」と安堵の表情を浮かべた。「(総合格闘技は)レスリングとは違い、一発のある競技。負ける心配はしていなかったけど、絶対はない。そこの心配はちょっとあったので、勝って安心しています」

第2ラウンド、ハイキックを見事に決めた

 フィニッシュとなったハイキックは、狙った一撃だったと打ち明ける。「ハイを打つためにローを蹴って、(相手の意識を)少し下に移していました。その作戦がうまくはまった感じですね」

 新型コロナの感染拡大による入場規制で、会場には通常の半分程度の観客しか許されなかった。それでも、中村応援団は90人ほど訪れた。「ほかにも『見に行きたい』と言ってくださる方がいっぱいいました」

 この日は東京オリンピックが開幕してから3日目。その質問が飛ぶと、中村の口からは冒頭の言葉が飛び出した。そして、東京オリンピックの日本代表から試合前にメッセージをもらったことを明かした。

 「男子フリースタイル57㎏級の高橋(侑希)君や74㎏級の乙黒兄弟のお兄ちゃんの圭祐から、『オレたちを勢いづけてくれ』『レスリングの強さを見せつけてくれ』と伝えられた。いいバトンが渡せたと思います」

 夢は世界最大の格闘技プロモーション「UFC」でチャンピオンになること。もうひとつのオリンピックロードに向かって、中村は一歩踏み出した。

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