「ゲッターロボ アーク」流拓馬を演じる内田雄馬が語る「演じる時に大切なのは、その瞬間をキャラクターとして生きること」

熱き魂を持つ3人の若者が操縦する3機の飛行メカが組み換え合体し、3種類のロボに変形! そんなギミックで“合体変形ロボ”の金字塔を打ち立てた、1974年放送のテレビアニメ「ゲッターロボ」。そこから始まる「ゲッターロボ・サーガ」の原作マンガ最終章「ゲッターロボ アーク」がついにアニメ化され、オンエア中だ。

主人公の流拓馬を演じるのは、人気アニメ「呪術廻戦」の伏黒恵役などで知られる内田雄馬。周囲を巻き込み、力強く前進する拓馬役は、内田にとって新しいチャレンジだったという。役どころから演技論までをたっぷり語ってもらった。

── 作品への出演が決まった時の気持ちを教えてください。

「まずオーディションの話をいただいた時は、今、新作を制作すること自体が面白いなと思いました。僕にとって『ゲッターロボ』は、伝説的なアニメ。今の時代に、そういった作品を制作するのは挑戦的なことだし、きっと新しい風になるだろうと思いました。『今の人に、どう受け入れられるんだろう』と想像すると、すごく楽しみでしたね」

── これまで「ゲッターロボ」との関わりは?

「僕自身は、世代ではないこともあり、74年版のアニメはきちんと見たことがなかったんです。ただ、“ゲッター”の存在は、『スーパーロボット大戦』シリーズ(さまざまなロボットアニメのロボットやキャラクターが登場するゲーム)で知っていました。技もすごいし、やっぱり強いんですよ。74年版のアニメは、出演が決まってからあらためて拝見しました。どのキャラクターも、キャストの皆さんが相当なエネルギーをぶつけて演じていらっしゃる。これは責任重大だなと思いました」

── 「ゲッターロボ アーク」の原作漫画の印象を教えてください。

「まず、絵柄が強いですよね。そして、物語性がしっかりありつつも、パッと読んだ時に、『こいつが敵で、目的はこうで、こういうことが起きていて…』と、すぐ分かるんです。そのシンプルさには、漫画の“髄”のようなものを感じました。アニメーションにもその完成されたストーリーの流れは反映されていて、とても分かりやすいなと」

── 演じる流拓馬はどんなキャラクターでしょうか。

「拓馬は言葉をすごく前にぶつけるし、気持ちも前に出していく。そうやって、周りを巻き込んで、引っ張っていくキャラクターなんです。僕自身は本来、人を支える方が居心地よく感じるタイプ。己の目的のためにガンガン進んでいく拓馬は、自分にとってやったことがないアプローチのキャラクター。新しいチャレンジになりますし、すごく演じたかったんです。なので、オーディションで決まった時はすごくうれしかったですね」

── 演じる中で、拓馬のイメージが変わった部分はありますか。

「オーディションの時にいただいたビジュアルでの第一印象は、割と粗暴な人。グイグイ行くだけの人なのかな、なんて思っていました。ただ、演じてみると意外と“人思い”なところがあるんです。自分の目的に対してはガンガン進んでいく一方、周りを見つつ、言葉を発しているんだなって。出てくる表現はぶっきらぼうだし、『なんだ!?』と思うと、相手にぶつけて問うタイプなので、パワーは強いですけどね」

── そして、彼を突き動かすのは、母の敵・マクドナルドへの復讐(ふくしゅう)です。

「そこには、母を思う優しさとともに、若さ、危うさもある。でも、大切なものへの思いをちゃんと感じているからこその行動原理ですよね」

── そんな拓馬のエネルギーを、どんなふうに自分の中から引き出して演じているのでしょうか。

「基本的には、どのキャラクターについても台本を読み込んで、どう組み立てていくかを考えます。アフレコする作品は毎日違うので、一つの作品のことを考えて、アフレコが終わったらすぐに次の仕事のことを考えて…の繰り返しです。拓馬はフィジカルが強い人なので、その屈強さ、動じない部分を意識して、自分自身もどっしりと構えていようと考えています。考えて考えて、ごちゃごちゃになって、焦げているものもあれば、いい感じにあめ色に炒まったものあるので、その上で、現場では、いったんそういうものを全部捨てて、『ポンッ』と出てきたものが、結果、芝居になっていくんだと思っています。拓馬に関しても、僕はそうやって作っています」

── では、演じる上で一番大切にされているのは、役について考えること?

「収録している時は、その瞬間をキャラクターとして生きることが大事だと思います。だから、自分が次に言う言葉が分かっていてもダメなんです。次に何を言うか、分かる人間はいないじゃないですか。その時々に、新鮮に言葉を感じなきゃいけない。声優さんによっては、もっと計算してお芝居を出す方、なりきって演じる方、いろいろですが…僕の場合は、『この人は何を考えている人なのか』をすごく考えます。『この人は、周りからどう見えているんだろう』とか」

── キャラクターがどんな人間か、つかむコツはあるのでしょうか?

「台本を読みながら、会話に注目するんです。友達に、『あの人どんな人?』と聞かれたら、『あいつ、ああいう時にこういうふうに言う人なんだよね。だから、カッコつけだよね』とか、会話の中から思い出すと思うんです。台本も会話なので、読み込んでいくと、『こういう時に、こんなふうに言うということは、このキャラクターはこういう人なんだろうな』と、自分の中で像ができていく。さらに、この人はなんでこう言ったんだろう、何を感じたんだろうと探っていくと、その気持ちが入ってくるし、キャラクターとして言葉が出てくる。抽象的だけど、そういうことだと思うんです。『これはこうだな』とパッと考えられればいいんですけど、僕はあまり器用ではないので…」

── ところで拓馬の好物は「コンビニのおにぎり」ですが、内田さん自身は…?

「コンビニおにぎりは、バリエーションが豊富で、カロリーなども全部表示されているのがいいですよね。計算しやすいので、ボディーメークにとても役立つんです」

── 内田さんといえば、“肉好き”で知られています。コンビニおにぎりでも、肉系の具材を選ぶことは多いのでしょうか?

「肉はもちろん大好きです。ただ、コンビニおにぎりの具材としては選ばないです。糖質を取る時は、脂質を取らないようにしているんです。脂質を食べると決めた日には、肉だけ食べますし、おにぎりを食べた日は、脂が少ない食事にする。トレーニングする日や、瞬発的に頭を働かせないといけない日は、割とおにぎりを食べますね。具材はたらこが大好きです」

──「ゲッターロボ」シリーズというと、必殺技を叫ぶシーンも印象的です。

「いやもう、 大変ですね(笑)。楽しさもありますけど、やっぱり、必殺技を撃つのは気合がいるんです。この一撃で決める、次はないという気持ちで撃つ。これはもう、大変じゃなくなる日は来ないでしょうね。ただ、お芝居を抜きにしていえば、大きい声を出すのは気分爽快ではあります(笑)」

── コロナ禍で、キャスト全員でのアフレコが難しい昨今。「ゲッターロボ アーク」の現場は…?

「何グループかに分けての収録になっています。ただ、流拓馬役の僕とカムイ・ショウ役の向野存麿さん、山岸獏役の寸石和弘さんというゲッターアークのパイロット3人はそろって収録させていただいています。ただ、スケジュールをぎゅうぎゅうに詰めて録っているので、皆さんとなかなか雑談する機会がないのが残念で…。向野さんは『ロボットアニメが好き』とおっしゃっていたのですが、そのことが演技にも存分に出ているんじゃないでしょうか。寸石さんが演じる獏は、表情豊かだけれど、考えどころがつかみづらい役だと思うんです。予知能力があって、達観しているところもあって…。自分が演じるとしたら、どこまで表情を出すか悩むキャラクター。寸石さんはそんなキャラクターにしっかりと乗って役を作られているので、僕もそれを受け止めながら演じようと思っています」

── キャラクターの個性はさまざまですが、総じて“熱い”ですよね。

「役柄自体、エネルギッシュな人たちが多いので、その分皆さんの芝居も力強い! 作品の濃さがお芝居にも反映されているんです。それは、先にアフレコされた皆さんの声を聞いても感じます。一緒に録ることはできなくても、熱い現場になっていることを、すごく感じています。中でも内田直哉さんが演じていらっしゃる神隼人の声は、聞くだけで『ハッ!』となりますね。パワーがすごいんです」

── ファンへのメッセージをお願いします。

「今まで『ゲッターロボ・サーガ』を応援してくださっていた方にも、初めて見る方にも、このアニメで熱くなってほしい! 魂が奮い立つようなアニメーションを目指しています。今はまだ収録中で、物語がどう終結するかは、僕自身も知らないんです。皆さんにもぜひどうお話が進んでいくのか、楽しみにしていただきたいですね」

【プロフィール】

内田雄馬(うちだ ゆうま)
9月21日生まれ。東京都出身。代表作にアニメ「BANANA FISH」(アッシュ・リンクス役)、「ぐらんぶる」(北原伊織役)、「フルーツバスケット」(草摩夾役)、「呪術廻戦」(伏黒恵役)など。現在、「死神坊ちゃんと黒メイド」(TOKYO MXほか)に出演中。2018年にアーティストデビュー。2nd Album「Equal」が9月22日にリリース予定。

【番組情報】

「ゲッターロボ アーク」
TOKYO MXほか
日曜 午後11:00~11:30
※放送時間変更の場合あり

“合体変形ロボ”の金字塔となった1974年のテレビアニメ「ゲッターロボ」。そこから始まる「ゲッターロボ・サーガ」の原作漫画最終章がついにアニメに。流拓馬(内田雄馬)、カムイ・ショウ(向野)、山岸獏(寸石)の3人が、神隼人(内田直哉)の指揮の下、ゲッターアークに乗り込み、人類の敵と戦う。

取材・文/仲川僚子 撮影/中村彰男 ヘア&メーク/尾関真衣(addmix B.G) スタイリング/奥村渉(WM)

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