中国が恐れる〝大魔王〟伊藤美誠の素顔 熱く語った古着&ボタン愛

〝大魔王〟と呼ばれる伊藤の意外な素顔は…

「大魔王」の素顔は――。卓球女子シングルス3位決定戦(29日、東京体育館)、伊藤美誠(20=スターツ)がモンユ・ユ(シンガポール)を4―1で破って銅メダルを獲得した。準決勝では孫穎莎(中国)に屈したが、日本勢でシングルスのメダルは2016年リオ五輪銅の水谷隼(木下グループ)以来、女子では初の快挙。今大会、混合ダブルス金に続いて2つ目のメダルを手にした伊藤は、コート外でも大きな夢を描いている。

メダルの味は複雑だったようだ。マッチポイントを決めた伊藤は小さくガッツポーズ。準々決勝で石川佳純(全農)を下した相手から勝利を収めて表彰台に立ったが、悔しさを忘れることはできなかった。準決勝で同い年の孫にストレート負けを喫していたからだ。

3位決定戦後は「勝っても私は悔しい気持ちのほうが本当に強くて、うれしいという気持ちはちょっと薄いかな。1あるかなぐらいです。99は悔しいです」と率直な感想を語った。

それでも、日本女子のシングルスでのメダル獲得は初の快挙。これには「決勝戦と3位決定戦でしか勝って終われないんですよ。3位決定戦に回っても絶対に勝ちたい。そこはすごく強い思いでやっていたので、プラスに変えられたかな」と前を向いた。

誰よりも試合を楽しむ伊藤にとって、五輪の1年延期はもちろん、コロナ禍で実戦機会を奪われてショックを受けたことは容易に想像できる。

実際に昨年11月に国際大会が再開するまでの〝空白期間〟を「自分の練習をしたものを生かせる場所がないというか、何のために練習をしたらいいか分からなくなった」と振り返ったこともある。しかし、母・美乃りさんや松崎太佑コーチらの支えもあって前を向いた。「練習をやり込めたのはプラス」。大舞台をイメージして汗を流した結果、混合ダブルスでは表彰台の頂点に立つことができた。

卓球王国・中国のメディアから「大魔王」と呼ばれ警戒される伊藤だが、コートを離れると20歳の女子になる。洋服やアクセサリーを集めることが趣味で、特に古着を好む。自宅の「ハンガーの半分は古着屋さんのもの」だという。

そんな伊藤は以前、本紙にこんな夢を打ち明けていた。「海外で古着屋さんに行って買い付けをやってみたいです。でも、古着屋さんになりたいというよりは自分が好きなものを見せたいというか『こんなものもあるんだよ』と広めたいんですよね。お店よりも発信? そういうことをやっていきたいなと思います」。〝無敗の女〟という卓球選手としての究極目標に加え、ファッション系インフルエンサーとしての活動にも興味津々というわけだ。

アクセサリーへのこだわりも強い。「私はビンテージボタンがすごく好きで、ボタンでアクセサリーを作ることもできるので、いろんな人のアクセサリーを見ていると自分も作ってみたいなと思うんです」と、制作にも意欲的だった。

コロナで自由に海外に行ける状況ではないが、かねて「レトロな街並みにも行ってみたいし、旅行と買い付けが夢」とも語っていた。ただし、ファッション業界進出の〝夢〟へ向けて動くのはあくまでも五輪の戦いを終えてからだ。

次なるステージは団体戦。伊藤は「目標は金? もちろんそうです。団体戦は私が全勝してチームにいい流れを持っていきたいと思います」とリベンジを誓った。

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