【高校野球】創部6年目で春夏連続準V 立命館守山を強くした「言いたくても言わない」指導

立命館守山・秋武祥仁監督【写真:上野明洸】

立命館大学時代は副主将、秋武祥仁監督が持つ方針は自主的に考える習慣を植え付ける狙い

甲子園出場への壁は高かった。全国高校野球選手権の滋賀大会決勝が29日、皇子山球場で行われ、初めて夏決勝まで勝ち上がった立命館守山は近江に0-6で敗れ、甲子園出場はならなかった。チームを率いる秋武祥仁監督は「本当にいいものを見せてくれた。残してくれた功績は非常に大きい」と、目を赤くしながら3年生を称えた。

序盤はどちらに転んでもおかしくない展開だった。先発の北村怜士投手(3年)は初回こそボール先行だったものの、3回までヒットは許さなかった。迎えた4回、1死から2者連続死球を与え、一気に近江ペースに。2本の適時打を許してこの回3失点。ここまで3試合でコールド、全4試合で2桁安打を放った打線も近江の山田陽翔投手(2年)、岩佐直哉投手(3年)を前に2安打と沈黙した。

甲子園出場はならなかったが、創部6年目にして、夏の決勝戦まで登り詰めた。春季県大会は3回戦で近江に逆転勝利。そのまま準優勝し、近畿大会にも出場した。秋武監督は「当然(近江も)レベルが上がっているというのは分かっていました。やっぱり差があったのかなと感じます」と肩を落とした。

創部4年目には近畿大会出場、限られた環境の中で躍進

2016年に学校創立10周年を記念して創部された同校野球部。4年目の2019年秋には県準優勝で、近畿大会に初出場した。短期間での躍進について、立命館大学時代は副主将、その後は社会人でもプレーしコーチも務めた経験を持つ秋武監督は、自身の指導法について語った。

「『言いたくても言わない』という感じですかね。経験させて、そして自分で気づいて。気づかなければこちらが教えてあげる」

打席でのボールの待ち方、守備のポジション取り……、「失敗するな」と思っても、練習試合ではあえて指摘しない。「自分が選手だったら、こういう監督がいいなと…」と語った秋武監督。選手に自主的に考える習慣を植え付ける狙いがあった。

野球部には専用グランドがなく、市民球場や立命館大学の球場を借りて練習を行っているため、環境と練習時間には限りがある。どれだけ短い時間で効果的な練習ができるか。そのためには「頭を使う」ことが重要だった。主将の吉田天龍内野手(3年)も「どのチームよりも頭を使ってきました」と胸を張る。

春に続き躍進を見せたが、チームの「甲子園で1勝」という目標は叶えられなかった。「先輩をすぐに超えてほしいなと思いますね」と秋武監督は2年生にハッパをかけた。短期間での成長がチームの強み。1か月もすればやってくる秋の大会までに、先輩たちを越えるチームを作り上げる。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

© 株式会社Creative2