長崎県内のスポーツバー 五輪の熱狂なく PR控える店、客は静かに観戦

店内で放映されている東京五輪柔道の試合を静かに見守る客ら=長崎市、HAMANZ Cafe

 東京五輪が連日の金メダルラッシュで盛り上がる中、長崎県内のスポーツバーに人々が集う姿は見られない。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、政府は「自宅での観戦」を呼び掛けている。店側は集客が見込めるはずだった一大イベントにもかかわらず、五輪放映のPRを控え、感染予防を徹底しながら運営。客はグループではなく、少人数で静かに観戦している。
 27日夕、長崎市浜町のカフェ&スポーツバー「HAMANZ Cafe」。2階に設置された大型スクリーンとテレビには、東京五輪柔道男子81キロ級準決勝で熱戦を繰り広げる永瀬貴規選手=長崎市出身=の姿が映し出されていた。店内には約10人。仕事帰りに1人で訪れた長崎市の会社員(59)は「ワーワー言いながら見ると楽しいんだろうけど、このご時世じゃね」。客はそれぞれ静かに画面を見つめ、決勝進出が決まっても、歓声が沸き起こることはなかった。
 店は昨年7月オープン。五輪での集客も見込んでいたが、密を避けるため、大々的な宣伝は控えている。運営するオランダ屋企画の川口親義常務取締役は「五輪目的の客はほぼいない。この状況は本望ではないが、応援が盛り上がると感染が拡大する懸念もある」。客に手指消毒やマスク着用の徹底を呼び掛けているほか、適切に感染対策をしている店のお墨付きとなる「ながさきコロナ対策飲食店認証制度」の認証へ向け、パーティションなどの準備を進めている。
 開業6年のクラフトビールバー「LOCAL」(同市銅座町)も店内で五輪を放映している。だが、過去のサッカー、ラグビーのワールドカップ(W杯)の時のような、客が店からあふれるほどの熱狂はない。オーナーの中村一代さん(38)は「客はW杯のときの10分の1。密が心配だから今ぐらいがちょうどいい」。換気のため、窓を全開にして客を迎える。
 一方、コロナ禍収束まで休業する店もある。近くのミュージック&スポーツバー「ジミーズ グレイスランド」は、客の医師の助言を受け、昨年5月から休業。これまでW杯などの期間中は国内外の客が集い、東京五輪中も競技時間に合わせて営業時間を前倒しして対応する予定だった。オーナーのジミー渡辺さん(63)は「五輪のソフトボール女子決勝の後、客から『一緒に見て楽しみたかった』というメールが来て残念でしょうがなかった。でも客の安全が第一。早く落ち着いて再開できれば」と、早期の収束を願った。


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