侍Jに浮上した次戦への課題 専門家が指摘した「継投」と「ファーストストライク」

野球評論家・飯田哲也氏が指摘する侍ジャパンの次戦への課題とは【写真:Getty Images】

元ヤクルトの名外野手・飯田哲也氏が侍ジャパンの初戦を振り返る

東京五輪の野球日本代表「侍ジャパン」は、グループリーグA組初戦のドミニカ共和国戦(28日 福島・あづま球場)で9回逆転サヨナラ勝ちを収めたが、まさに薄氷を踏む勝利だった。2戦目のメキシコ戦(31日=横浜スタジアム)へ向けて、浮き彫りになった課題とは何か。現役時代にヤクルトなどで名外野手として鳴らした野球評論家・飯田哲也氏が指摘する。

「第一に気になったのは継投です」と飯田氏は言う。先発して2安打無失点の快投を演じていた山本由伸投手(オリックス)が6回88球で降板。0-0の7回から青柳晃洋投手(阪神)にスイッチしたが結果的に先取点を許す形となった。

青柳はプロ入り後、レギュラーシーズンでリリーフ登板したのはルーキーイヤーの2016年6月19日・ソフトバンク戦(甲子園)の1度だけだった。

飯田氏は「0-0での投手交代は、試合の流れが傾くきっかけになりやすい。短期決戦の五輪ですから、山本は多くても2、3試合しか投げられないでしょうし、球数制限もない。せめて7回まで行かせてほしかったと思ってしまいます」と言う。

一方で「首脳陣としては、侍ジャパン初選出の青柳がどこまで通用するのか、早い段階で見ておきたいという思いもあったのでしょう。とはいえ、リードしているとか、ビハインドの展開ならまだしも、0-0という独特の緊張感に包まれた状況で出ていくのは、リリーフ経験の少ない青柳にとって酷だったのではないか」と指摘する。

侍ジャパン・青柳晃洋【写真:荒川祐史】

打者38人のうち11人「ファーストストライクの甘い球を見逃し過ぎ」

変則的な右のサイドスローの青柳は、右打者にとっては球の出どころが見えにくいが、「ドミニカ共和国打線はスイッチヒッターが多く(スタメン野手9人中、1、6、7、8、9番打者の5人)、優位性を発揮できない相手だった」とも語る。今後の起用法は「右打者が並んでいるところなら十分通用すると思いますが、左打者に対して使いづらくなったのは確か」と分析する。

いずれにせよ、継投は非常に難しく、逆に言えば首脳陣にとってこれ以上の腕の見せ所はない。「首脳陣にとっては反省材料となる試合だったかもしれません。それでも、勝ち切ったことによってポジティブにとらえることができます」とうなずいた。

打線は、9回に一挙3点を奪って試合をひっくり返したが、8回までは4安打1得点に抑えられ、非常に重苦しい雰囲気に包まれていた。飯田氏の目には「ファーストストライクの甘い球を見逃し過ぎ」と映っていた。実際、この試合で侍ジャパンののべ38人の打者のうち、ファーストストライクを打って出たのは30%にも満たない11人だった。

大舞台の初戦とあって、硬くなったところもあっただろう。しかし、相手の先発で7回途中まで投げたメルセデスは巨人所属で、球種などは把握できていたはず。相手が初見の投手となれば、さらにファーストストライクに手が出なくなるかもしれない。

「ドミニカ共和国の投手が普通にベースカバーに入っていたら、日本は負けていた」

飯田氏は「相手投手のことが分からないからじっくり見ていこうと考えていると、結局何もわからないまま追い込まれてしまうものです。スイングしながら、タイミングが早いなとか、遅いなと感じた方が攻略しやすいと思います」と警鐘を鳴らした。

侍ジャパンの逆転サヨナラ劇は、2点を追う9回1死走者なしから始まった。柳田が放った打球は平凡の一ゴロに見えたが、投手のベースカバーが遅れ、出塁を果たした(記録は内野安打)ことが口火となった。

また、ドミニカ共和国としては、9回の攻撃で1死一、三塁からヌネスが右中間を破る適時二塁打を放った際、一塁走者が三塁にストップし、1点しか取れなかったことが、結果的にその裏に響いた。

「ドミニカ共和国の投手が普通にベースカバーに入っていたら、日本は負けていたでしょう。逆に言えば、日本は絶対にこれをやってはいけない。全力疾走を徹底し、無駄な四球やエラーを与えないことを、次戦へ向けて改めて肝に銘じるべきでしょう」と飯田氏は言う。苦戦から始まったからこそ、反省を糧に悲願の金メダルへ漕ぎつけることができた──という結果になれば何よりだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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