Vol.23 ドローンパイロットで飯が食えるか?その2 [シュウ・コバヤシのDRONE MANIA]

前回

からの続きで、ドローンで飯を食うには何をすればいいかを考えていきたいと思います。前回は私が実際にメインにしている空撮と、ドローンスクールについて書きました。今回はそのほかの

  • ドローン点検
  • ドローン測量
  • 農薬散布、調査
  • ドローン製作
  • ドローンレーサー

これらについて考えていきます。

ドローン点検

産業系でのドローン活用で、今後一番の注目分野が点検だと思います。日本は高度経済成長期に作られたインフラや設備が老朽化しています。それらを点検するには手間と人手がたくさん必要です。特に高所や狭隘部などは人が行きにくく、足場やクレーンが必要な場所が多いため、ドローンで点検をすることにより、時間と手間を大きく削減できる分野です。

では、DJIのMavic Air 2買ったからすぐ点検の仕事が来るかというと、そんなに簡単ではないです。操縦技術はもちろん必要ですが、それ以上に点検に必要な知識が必要です。また、カメラの知識も必要になります。

センサーサイズとレンズと被写体との距離から、1ピクセル何mmの解像度が得られているか、画像にブレが出ないようにするにはシャッタースピードをいくつにすればいいのか、そもそも何が問題で何を撮ればいいのか、橋げたの場合はどこをチェックするのか、コンクリートは何をチェックすればいいのか、という根本的なことが理解できなければ邪魔になるだけです。

また、工場に入るには入構教育が必要な場合もあります。安全靴、安全帽(ヘルメット)、さらに高所の場合、安全帯も必要です。最近法律が変わりまして、腰に巻くだけの安全帯は使えなくなり、ロッククライミングでもできそうなフルハーネスが必要になりました。そのフルハーネスも新規格じゃないと使えなくなるなど、いろいろあります。

なので、何も知らないところから、点検方法を覚えていくより、元々点検業務をしている人がドローンの使い方を覚えていくほうが早いかもしれません。

ドローン測量

ドローンでの産業利用分野で、ある程度利用が進んでいるのがドローン測量ではないでしょうか。ドローンをプログラムで格子状に飛ばし、それをもとに点群データやオルソ画像(歪みを補正した上空からの真俯瞰画像)を作成します。現在では地図上から範囲を指定し、設定値を入れるだけで飛行コースが設定され、ソフトによっては後処理までも行なってくれるような物もあり、かなり手軽になったと言えます。

ここまでの流れでお気づきだと思いますが、これもドローン買ってきて、ソフトの使い方覚えればすぐに仕事になるかというとそうではありませんよね。測量も測量の知識がなければできない仕事です。

以前では基準点を置かなければ精度が出ませんでしたが、現在はGPSの補正技術が進み、基準点がなくても精度が出るようにはなってきましたが、それでも評定点を置き、精度検証を行う必要があります。ドローンだけわかっていても精度検証はできないですよね。

農薬散布、調査

農薬散布はドローンが一般的になる前からエンジン搭載のシングルローター機などで行なわれてきました。すでに実用化されている分野です。日本は大規模な農場は北海道などの一部しかなく、山間部などの細かな農場が多いです。高低差も多く、ドローンによる農薬散布が非常に効率的だと思います。

マルチローター型の農薬散布ドローンも数多くの製品があり、参入しやすくなっています。参入する人が多いということは、単価が安くなっているようです。また、依頼をすると、それぞれのスケジュールの調整や待ちが発生するため、農家が人に頼むのではなく、自分で散布したいときに散布できるよう、ドローンを購入し、運用し始めているようです。シングルローター機に比べれば運用が簡単なため、自分でやろうという気になるのも当然ですよね。

また、農業分野では通常のカメラやマルチスペクトルカメラなどを利用し、育成状況や害虫、病気などの分析に利用する方法も模索されています。ただ、これもまた撮るのは簡単ですが、その後の利用方法については研究途中だといえます。

ドローン製作

7、8年前ならドローンを組み立てるだけで商売になりました。しかし、現在では完成度の高い製品であふれています。なかなか組み立てるだけでは難しいでしょう。ですが、現在中国製品を排除しようという動きが一部であります。

以前

の記事でも触れているので詳細はそちらを読んでいただければと思いますが、ある意味国産ドローンが必要とされています。

SONY Airpeak S1が発表され、大きなニュースになりました。Airpeak S1はミラーレスカメラを搭載する中型の機体になります。大型の機体なら国産でもいくつかあります。今ちょうどないのが小形の機体、DJIでいうとMAVICクラスの機体になります。簡単ではないですが、このクラスを作れば世界的に売れますよ。もちろんMAVIC以上の機能と性能が必須ですけど。

ドローンレーサー

この記事を書いている途中で、そういえばこういう分野もあったなと思いついたのが、ドローンレーサーです。数年前にドバイで開催されたレースの賞金は1億円と聞いています。世界のトップ選手になれば充分稼げるでしょう。ただ、あくまでトップ選手になればですね。

また、国内でもドローンレースの大会が開かれていますが、さすがに賞金だけで食べている人はいないでしょう。日本はスポーツの選手でさえメジャースポーツ以外ではアルバイトをしながらでないと厳しい現状があります。

もう少しエンターテイメントとしての収益を考えないと今後の発展も厳しいのではないかと思います。ただ、eスポーツが話題になってもいますので、それに乗っかれば今後面白いのでは。個人的にはテクニカルなコース設定ではなく、オーバルコースなどわかりやすいコース設定にし、機体も大型化するなど、観客が観戦しやすい状況を作った方が良いと思っています。

まとめ

まとめると、ドローンを飛ばせるだけでは飯を食えません。でも、それはドローンに限ったことではありません。美味しいコロッケを作れても、どこで売るか、誰に売るか、そこがうまくいって初めて商売として成り立つと思います。

つい新しい技術や製品が注目されると、それを使うだけで儲かるイメージがありますが、そんな事ありませんよね。独立して思ったのは、営業力がすべてだということです。空撮の技術などどうにでもなります。仕事をいただける関係性こそ重要だと思います。

そして、他業種からドローン業界に参入するのに一番確実なのは、今ある手札にドローンを追加すると強くなる。そんな方法を見つけるのが一番だと思います。そうなると、カメラマンや特機屋さんなどがドローンを使えば映像に幅が出ますし、測量や土木、建設関係の仕事にドローンを足せば便利になるかもしれません。

ここに挙げた以外にもドローンと親和性のある事業があるかもしれません。そういったものが今後の狙い目だと思いますよ。

© 株式会社プロニュース